ロボット汎用地図を射程に、ドローン地図で世界一へ。

――小田さんのこれまでの経歴を教えてください。

大学院を博士号をとらずにドロップアウトしていたものの、その後も大学のさまざまな専門分野の先生たちとのプライベートな交流は続いていて、2年くらい前からみずから主導して先生たちと一緒に研究プロジェクトを始めました。京都はぼくのようなあぶれ者にも寛容なところがあって、肩書きはなくても、おもしろいことを言ってたりやってたりしてたら、認めてもらえる風土がある。これがほかの土地ならのたれ死んでたんじゃないかなと。当初は、衛星データが有効に使われていないことに目をつけ、宇宙物理学が専門の教授や、JAXAの研究員の方、機械学習が専門でデータ創薬の研究をしている先生たちと一緒に、増大しつつある衛星データとデータ量で真価を発揮する機械学習を掛け合わせるかたちで、まずは衛星データの解析をしてみることからはじめたのです。幸い専門家からはユニークだと言われ、出だしはよかったですね。それも大学の研究予算を使うのではなく、ベンチャーとして民間の資本の力を使って技術開発をしていきたいという思い、ビジネスにするんだ、実社会にインパクトをあたえるんだという思いで研究を行っていました。

 

――その研究プロジェクトが、小田さんが現在研究されているプロジェクトにつながるのでしょうか?

はい。でも、衛星データを実際どう役立てるのかというところに半年以上苦戦して。おもしろいことができるはずだというかたちではじめたので、ニーズのほうを見ておらず、テクノロジードリブンすぎたのです。またガス代が払えなくなる、毎日サラダバーだけで過ごすなど経済的にも困窮していました。そんな時に閃いたのが、ドローンの自動飛行のための地図作りの研究です。衛星は、3次元の立体的なデータをとることができます。それが何にとって一番価値があるのかというと、三次元空間を動き回るものにとって価値があるのではないかと。そこで初めて、ドローンというものを組み合わせようという着想に至りました。成果は人工知能学会などで発表しています。最初のうちは研究者コミュニティーでは「GPSがあるのに、わざわざそんな技術はいらないんじゃないか」と言われることが多く自信を失いかけていたのですが、大学外で発表するようになったところ、「今すぐにでも開発してほしい」と声をかけてもらうようになり、ビジネス的な展開をしていくようになりました。

 

――具体的に、小田さんが研究開発を進めているドローン自動飛行に関する研究とは、どのようなものなのでしょうか?

衛星からとってきた事前データと、ドローン自身が空間上からとってくる観測データをマッチングして、ドローンが三次元のどこにいるかを推定するというもので、ドローンのための地図を作成しています。軍事技術のなかでCEPというミサイルの命中精度をあげる用途で使われているところからヒントを得ています。ロボティックスの文脈でいえばSLAM(Simultaneous Localization and Mapping)という技術に近いものです。今は衛星データの要素は小さくなり、ドローン自身が取得するデータをメインに使うようになってきて、ドローンにフォーカスしていっています。

 

――この技術は、どのような場面で活躍するのでしょうか?

例えば橋梁の下であったり、地下トンネルの中だったり、建物の中であったりとGPSデータを受けとることができない場所で威力を発揮します。なので、橋梁やトンネルの点検作業などに活用できると考えています。ドローンのカメラの精度も上がってきているので、実際に今までは目視で人が確認を行っていた作業をそのまま代替できるようになるはずです。これまでは人の手によって確認するしか方法がなかったために、毎年二桁の人が高所作業中に亡くなっていると言われています。この技術によって、そうした事故は確実に減らせるでしょう。

 

――ドローン業界の今や今後について、小田さんはどうお考えですか?

今、ドローンビジネスにおいて、中国の深圳のチームが圧倒的に強いです。ドローンというものは、要するにコンピューターです。その昔、コンピューターというものは研究者や軍の人がわざわざ借りに行って使うもので、サイズもとても大きいものでした。それが小型化されてオフィスに入り始め、家庭に入り始め、誰もが持ち歩くことができる手のひらサイズのコンピューターつまりスマートフォンというものに進化してきました。そのスマートフォンと同じ機能を持ち、かつ三次元上で動き回ることができるのがドローンです。なぜ深圳でドローンビジネスが強いのかというと、iPhoneを始めとしたスマートフォン製造の下請けをやってきて、そうした生態系があるからです。深圳の人たちはそのノウハウを活かして、スマートフォンの進化系であるドローンビジネスに力を入れ始めたのです。

 

――実際に、小田さんも深圳に行かれたそうですね。ドローンビジネスの最先端である深圳は、いかがでしたか?

深圳を始めとした中国はこれまでキャッチアップ型といって、シリコンバレーやヨーロッパで流行った技術やサービスを中国市場でブロックして、同じような技術やサービスを政府との合弁会社が中国国内でローンチしスケールさせるというものが多く、今もそういったビジネスモデルがメインだと言われています。でも、ドローンに関しては全く違います。どんどん世界の市場を切り開いていて、まったく新しくイノベーティブです。シリコンバレー勢とガチで戦って駆逐している。痛快ですよね。この流れは、いずれドローンだけではなく他の産業にも間違いなく来るはずだと、実際に深圳に行って確信しました。働いている人たちも若く、熱気に溢れ、夢に満ち満ちていました。しかも志が高い。わたしは、いま仏教伝来のときと同じように、中国から学ぶべきときと考えています。

 

――小田さんの今後の展望を教えてください。

深圳の人々から学んだことは2つ。ゼロイチを深圳でおこないグロースをサンフランなどのアメリカでおこなっているということ、海外のお金を入れ混血化していること、です。われわれも愚直にこれらを目指します。

ずっと言っているのですが僕はロボットの汎用地図を作りたい。ドローンだけでなくあらゆるロボットが使う地図を作りたい。今はドローンに絞って研究を進めていますが、いずれは世界中のさまざまなロボットに活用できる技術にして、横展開していきたいです。そうすることで、いずれはいろいろなロボットがセンシングしたデータを共有し合って、建物を建てたり壊したりというような人間がやっていたことも代わりにできるようになり、世界を自動化できる。レゴブロックを組み立てるように、世界のどこかで誰かがコードを叩いたら、何万キロと離れたところであってもロボットたちがその人の代わりに建物を建ててくれる。ゲームを作るように世界を作れるようになる。そんな世界が、必ず実現する。世界をプログラマブルにするぞ、そう言っています。

 

――そのような自動化が進むと、世界はどんな風に変わっていくとお考えですか?

自動化には、両義性があります。良いことも悪いこともある。悪いことでいえば、よく言われるようにまずは今まで橋梁やトンネルなどの点検作業をしていた人たちの価値が下がって短期的には人間の尊厳を奪われるようなことも出てくるだろうなと。イノベーションはそれが深度をもてばもつほど必然的に両義性をはらむとおもいます。一方の良いことでいえば、これまでも人類はあらゆるものを自動化させて、面倒なことから解放され、新しいことをしてきた歴史があります。アートなどは残りつづけるでしょうね。僕が研究してきたことも人類の古典的な変化の延長として、わずらわしいこと、危険なことから解放されるイノベーションになると思っています。さしあたって、われわれはドローン×地図の領域で世界一になることが目標です。十分可能だと思います。

 

――PAAKについてお聞きします。活動拠点が京都である小田さんですが、PAAKに応募されたのはなぜですか?

応募するきっかけは、もともと会員だった『GITAI』というプロジェクトの中ノ瀬さんからの紹介でした。これは、地方スタートアップあるあるだと思うのですが、VCの方にお会いしたり、ピッチイベントに出たりするのに、東京に頻繁に来ないといけなくて疲弊してきます。そういう時にPAAKには本当にお世話になりました。それから、コミュニティーマネージャーの方にもすごくお世話になりましたね。もちろん人を紹介してもらったりといろいろとしてくださったのですが、それ以上に東京という砂漠で暖かく迎えてもらい安心感をもらえる存在でした。僕らのような駆け出しのスタートアップには本当にありがたいことでした。

 

――印象に残っている会員さんがいらっしゃいましたら、教えてください。

やっぱり、中ノ瀬さんですね。深圳に行った時もいろいろな人に会って話して意識が変わりましたが、PAAKに行けば中ノ瀬さんに会って話すことができて、その度に背筋が伸びる思いになったというか…。地方にいると切磋琢磨できるような良質な刺激をあまり受けることがないなと感じているので、PAAKで本質的なイノベーションを志向している人と触れ合えたことが、本当に良かったなと思います。

 

――最後に、このインタビューを見る方にメッセージをお願いします。

テクノロジーを通じて人類社会を良くしていこうと考えている人は、たとえその人の進めているプロジェクトが競合になるとしても、僕は大きい意味で仲間だと思っています。本気で世界を変えようとしている人が、もっともっとPAAKから出て来てほしいなとおもいます。ありがとうございました。

 

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