声のメディアで、 世界に新しい文化を発信していく──Voicyインタビュー

株式会社 Voicy
CEO 緒方 憲太郎

声に焦点を当てたメディア『Voicy』で、世界に新しい文化を発信していく。

緒方さんのこれまでの経歴を教えてください。

もともとビジネスが大好きで、いろいろな仕事を経験したいと思っていました。そこで、様々な会社と関わることができる公認会計士の資格を取得しました。大きな会社はどこも、ポリシーをしっかりと持っています。会計士時代はそういった会社とお付き合いをしながら、会社が何のためにあるのかを考え、事業のお手伝いをしていくという仕事をしていました。5年ほどでその仕事を辞めたんですが、当時の考えは今も変わらずあって、自分が何のために事業をやるんだろうということをよく考えています。

会計士として5年ほど働かれた後は、どんなことをされていたんですか?

会計士の仕事を休職して、地球2周の旅に出かけました。1年間かけていろいろな国に住んで、その中でアメリカのボストンにも住んで。語学学校生でありながらハーバードの学生が集まるような日本人会によく顔を出していましたね。そうしたら、2011年に日本で震災が起きたんです。その時、日本人会で知り合った医師たちとNPOのような組織を作りました。日本医師会と話してどこに何人の医師が足りないのかを聞いたり、航空会社と交渉をして航空券代やレンタカー代、ホテルの部屋を用意してもらったりして、医師が「行きたい」と言ったら次の日には現地入りできるような仕組みを作っていったんです。人の役に立つために生きる医師たちの活躍する場を作れる面白さを知りました。その後、次はなぜかボストンのオーケストラに頼まれて3000人規模のコンサートのマネジメントもしました。音楽家とビジネス側僕だけというカオスの中、スタンディングオベーションの中終了したときは感激で鳥肌がたちました。その時に感じたのが、ゼロからものを作ることのおもしろさと、仕組みを作ると人はよろこんでくれるんだということでした。

ボストンにいらっしゃった後は、どちらへ行かれたんですか?

旅の最後にニューヨークへ行って、世界4大会計事務所の一つであるEYに飛び込みで行ったんです。そこで出会った日本人の社員の方と仲良くなり、そこから人事に話をつけてもらって、ビザも取ってもらって…何と、EYに入社することができました。アメリカの大学を出ても現地採用となると難しいんですが、なぜか一度も海外の大学を出ていないTOEIC415点の僕が入社することができたんです。そうして、英語が喋れなかったので苦労を重ねながら、2年間をニューヨークで過ごしました。その中で優秀な日本人とたくさん会って、彼らが何かおもしろいことを見せてくれらいいんじゃないかと「ニューヨーク日本人勉強会」というものを作りました。最初は20人ほどのメンバーだったんですが、そのうちコロンビア大学が講堂を貸してくれるようになって、参加者も100人以上になって…今は2,000人くらいになっているんじゃないかな。毎月開催してるみたいです。そんなこんなで、ようやく日本に帰ってきました。

日本に帰ってこられてから、『Voicy』を立ち上げられたということですね。どのような経緯だったのでしょうか。

日本に帰ってきてから、トーマツベンチャーサポートに入社しました。そこで、ベンチャーの社長のメンターのようなことを始めたんです。当時はとにかく多くの会社をまわろうと、年間300社ほどのベンチャーを訪問して、社長たちに伴走していくという仕事をやっていました。そのうちにだんだん案件が増えてきて、そこで、「道なき道を切り拓いて、新しい価値を作る人を支える」と決めました。そうしたら、本当に変わったベンチャーが次々と相談に来るようになりました。携帯で開くドアの鍵とか、全自動洗濯折りたたみ機とか、アフリカに電力通すとか、果てには月の上を走る車とか、雷を落とさなくするとか、一風変わったベンチャーばかりが来て。そういう人たちに、まだまだ日本では少なかったベンチャーのアクセラレーターという立場でいろんなベンチャー経営の経験やノウハウを提供してたのですが、ふと自分は起業をしたことがないことに気付いたんです。それで、自分でも起業してみようと。それが、起業をする一つのきっかけですね。また、これまで数多くの会社を見てきて、社会によろこびを生むようなことをしている会社は儲からないと感じていたんです。でも、それが事業としてちゃんと成り立つんだということを世の中に証明したいと。それが、もう一つのきっかけでしたね。

『Voicy』というサービスを作ろうと思われたのは、なぜですか?

今、世の中には活字メディアや動画、AR、VRなど、目で楽しむメディアが多くあります。そんな中で、耳で聞くメディアはほとんどありません。だったら、そこに挑戦してみようと思ったんです。声は、情報伝達やコニュニケーションという機能性の面では十分使われているんですが、表現力だったり、その人が発信するからこそとか、人間の温かさみたいなものを売りにしている商品はまだないなと思って。例えば車にぶつかって死にそうになった時、一番大事な人の写真を見たいのか、文字を見たいのか、声を聞きたいのか…。人によっては、声という選択肢もあると思うんですよね。その声の温かさが世の中にあるモノに乗ってしまえば、もっとおもしろくなるんじゃないかと。社会の全てが声のデバイスになる。そんな世界を作るためにまずは、声のおもしろさを伝えていこうと、声とメディアのかけ算をするサービスを立ち上げようと思いました。特に、今は文字のメディアが多い。そこを、もっと表現力豊かなメディアにできないかなと思ったんです。

改めて『Voicy』とはどんなサービスなのかを、教えてください。

定義を何にしようかと悩んでいる段階ではあるんですが、今は音声配信のプラットフォームとしてサービスを提供しています。スマホによって誰もが音声をすごく手軽に配信できる仕組みになっていて、その時に既存の文字のメディアを使うことができるというのが、これまでとは異なる点だと思います。コンテンツ使用許可のある文字のメディアがあることで、これまでは何を喋ればいいのか悩んでいた人も、メディアを使って自由に発信できることはポイントです。聞く人は、その人をフォローすればプッシュ通知が来て、いつでも好きな時間に聞くことができる。ラジオと比較されることもありますが、「ラジオじゃなくて『Voicy』なんだ!」と言って頑張っているところです。

ラジオとの違いは、どんなところにありますか?

ラジオは番組構成があって、必ず枠があります。どちらかというと、そのコンテンツを作るための装飾品として出演者がいると思うんです。それに対して『Voicy』は、出演者である人にフォーカスをしています。『Voicy』はパーソナリティーが自分のチャンネルを持っていて、聞く人はそれぞれのパーソナリティーのチャンネルの部屋に行くという感じなんですね。なので、ラジオというよりは声のブログに近い。その人のチャンネルの部屋に行く、その人の時間を共有する。そんなコンセプトをもとに、サービスを作っています。

ユーザーからは、どんな反響がありますか?

僕たちは「LIKE」より「LOVE」を目指してサービスを運営しています。なので、ユーザーも世の中にある他のサービスよりも圧倒的にフレンドリー。パーソナリティーからは、「『Voicy』があるおかげで生活が変わった」という風によろこんでくれる人がたくさんいます。オフィスにも、そんな仲間たちが毎日遊びに来てくれるんですよね。パーソナリティーの方はみんな、自分がチャンネルを持っていることに誇りを持ってくれているようです。

『Voicy』を立ち上げる上で、苦労したことはありますか?

立ち上げ当初は『Voicy』のサービスを説明しても、「それは文字でいいんじゃない?」と多くの人に言われました。「こんな素人が喋るのが、どこがいいの?」というような声もあって、本当に苦しい時期がありました。でも、スタート当時から一緒にやってくれているエンジニアの窪田は、持ち出しでここまでやってくれ、そのおかげでリリースまでこぎつけることができたので、本当に感謝しています。その他にもパーソナリティーやデザイナーとか、一緒に立ち上げる仲間がいたというのは、やっぱり何よりもうれしかった。半年に1回パーソナリティー感謝祭を開いているんですが、第1回目は60人ほどの仲間が集まってくれて。『Voicy』は仲間に支えられてきたサービスなんだなということを、ひしひしと感じました。

今後、『Voicy』はどのように展開していくのでしょうか?

今、声の持つ力がちょっとずつ評価されてきていると感じています。僕たちの提供する『Voicy』もそうですし、『Amazon Echo』という商品が出てきたり、少しずつ声の可能性が評価されてきているなと。将来は、これをもっと明確にしていきたいと思っています。なので、まずは声の業界に参入したいと思っている人たちを巻き込めるようにしようと。『Voicy』の中でいろいろな企業がチャンネルを持ったり、声のコンテンツを持ったりできます。今はそのために、企業の誘致をしている段階です。そうして次のステップとしては、企業のチャンネルがある中に、個人でも面白い人たちがいるというプラットフォームになると考えています。

TECH LAB PAAKについてお聞きします。応募されたきっかけは、何だったのでしょうか?

きっかけはあまり覚えていないんですが、実は2期生くらいの募集の時にも応募したんですよ。でも、その頃は「声で何かができるんじゃない?」くらいにしか考えていなかったので、落選してしまって…。当時、オフィスがなくていろいろなベンチャーのオフィスを間借りしているという状況だったので、自分たちのオフィスがほしかったんですね。TECH LAB PAAKは、オフィスのないベンチャーにはけっこう知られている存在なんです。

TECH LAB PAAKのいいところは、どんなところですか?

同じ時期に自社オフィスを借りたので、月に何度かしか利用できなかったんですが、一番感謝しているのはパーソナリティー感謝祭をここでできたこと。ある程度の人数を集められる会場を借りられたこともそうなんですが、リクルートさんが運営している会場で開催できたことで、パーソナリティーからの信頼も得ることができたんじゃないかなと思っています。

最後に、『Voicy』に興味を持ってくださっている方へメッセージをどうぞ。

世の中にないものを作ることだったり、誰かがよろこぶものや新しい文化を創るということに興味がある仲間をもっともっと集めたいと思っています。また、そんな僕たちの思いに賛同してくれる人たちが活躍できる場を用意したいです。自己実現とかお金だけではないところに、それを超えたワクワクがあると思っています。もしかしたら、「最初はあんなミジンコみたいに小さなサービスだったのにね」と言われるサービスになるかもしれません。是非3日以上使ってみてください!きっと良さがわかってくると思います。そして一緒にワクワクを作っていきたい方は是非オフィスに遊びに来てください!多くの人に喜んでもらえるエキサイティングな仕事を一緒にできたら嬉しいです。

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