食品業界というレガシーな業界の未来を変える、唯一無二のサービス──スマートQCインタビュー

スマートQC
諸岡 裕人

食品業界というレガシーな業界の未来を変える、唯一無二のサービス。

諸岡さんのこれまでの経歴を教えてください。

もともと父親が、機内食の工場の管理など成田空港のアウトソーシング事業を行っていて、いずれはその事業を継ごうと思っていました。それで、大学を卒業してから3年間だけは外で社会人経験をしようとリクルートスタッフィングに勤めた後、会社を辞めて父の事業の手伝いをするようになり、航空機の機内食の工場立ち上げなどに関わるようになったんです。それが、食品業界との出会いでした。それまでは食品業界に興味があったわけではなかったので、自分が食品業界に携わる仕事をするようになったのは、今でもちょっと不思議ですね。

食品業界との出会いを果たした後、今の会社を立ち上げるまでにはどんな道のりがあったのでしょうか?

父の家業を手伝っている中で、この先10年くらいは大丈夫かもしれないけれど、その先この事業は一体どうなっていくんだろうと危機感を持ちました。というのも、求人広告を出しても人が集まらないし、本を読めばこれからはAIやロボットだという言葉を目にする。何か新しい事業をしようとランディングページを作ろうとしても1,000万円ほどかかるという話になって、ITの必要性を感じることが多かったんです。それなら、自分でランディングページくらい作れるようになりたいと思い立ち、父親に「一年間だけプログラミングの学校に通いたい。その間に、ITを使った新しい事業を作るから猶予をくれ」と話しました。その時は勘当される勢いで反対されましたが、なんとか説得して昨年の4月に通い始め、一から勉強を始めました。

その学校にいる間に考えられたアイデアが、『スマートQC』だったということでしょうか?

はい。もともとは、古い体制が色濃く残る、いわゆるレガシーな業界の一つである食品業界は頭になかったんです。でも、AIの研究者やその道のエキスパートの方に食品業界の話をすると「古い業界だからこそ、テクノロジーの力で変えられるんじゃないか」ととても面白がってくれて、もしかしたらIT×食品業界のサービスもありなんじゃないかと思って。それならば、父の家業を手伝っていた時に感じた食品工場の品質管理の問題を解決したい。その中でも、一番大変な工程である温度管理の作業をなんとかテクノロジーでスマートにできないだろうかと考え、現在開発中の『スマートQC』のアイデアを思いつきました。

改めてお聞きします。『スマートQC』とは、どんなプロダクトなのでしょうか?

食品の品質管理において一番重要なのは、温度管理です。何度以上になると菌が増え、何度以下になると菌が死ぬという目安が食材ごとに決められているので、その温度内になっているのかを人の手でチェックして記録するという作業が、食品業界の現場では毎日行われています。食品業界全体の市場規模は30兆円、そのうちスーパーやコンビニ、給食といったお惣菜市場は9兆円。特に多品種少量生産でお惣菜を作っている工場は管理する項目も必然的に多くなり、一つの工場で一日150枚以上の温度管理に関する書類を作成しています。もちろん、その書類をチェックするのも全て人です。『スマートQC』は、そんな手間も時間もかかる温度管理の作業を、テクノロジーの力でスマート化しようという思いで開発しているクラウドサービスです。具体的には、帳票を自動で作成し、計った温度を直接データにし、自動的にチェックを行い、クラウド上で共有することができるというプロダクトになっています。

『スマートQC』を食品工場に導入することで、どのようなメリットが生まれるのでしょうか?

これまで人の手で行っていた温度管理の作業を『スマートQC』に任せることで、現場の体制の改善であったり、創造的な部分であったりというところに力を入れることができます。また、これまでは人の手で記録をして、人の手でチェックをするので、その作業と作業の間にどうしても時間差が生まれてしまっていました。そうなると、温度管理がきちんと行われていなかった場合があったとしても既にその食品は出荷されているので、帳簿を完璧なものにするために温度表記の改ざんを行うことがやむをえない状況にある現場もありました。しかし、『スマートQC』を導入すれば温度管理をその場で自動でできるので、温度管理ができていない場合にはすぐに温度を見直すことができ、そもそも改ざんという行為が生まれない現場にすることができます。もちろん、これまで一日150枚も使っていた紙の使用量もゼロになりますし、日本語の苦手な外国人スタッフでも扱いやすくなる、そんなメリットもあると考えています。そして、いずれは『スマートQC』という最先端の品質管理のシステムを取り入れているということ自体が、世間的な信用度にもつながっていくのではと思っています。

『スマートQC』を開発する上で、苦労したことは何ですか?

たくさんありますが、やっぱりハードウェアを作らなければならなかったことが、一番悩まされた部分ですね。ある工場に相談すると、ロットが少ないので作るのに数100万かかると言われたりしてしまって…。あとは、プロダクトの方向性において迷走したこともありました。ある企業の品質管理の方と話をしたら盛り上がって、「こんなサービスがあったらいいんじゃないか」という話になり、途中まで別のプロダクトを作ってしまったこともあったんです。そんな紆余曲折がありつつ、やっぱり今の『スマートQC』が自分のやるべきものだと思い、この道に戻ってきました。

『スマートQC』の今後の展望を教えてください。

これまでの食品業界は、企業ごとに独自の品質管理のルールを設けていることが多く、20年経ってそのルールが間違っていたことに気づくというパターンも少なくありませんでした。そんな食品業界では、2020年までにHACCAPが義務化されることが決まっています。これによって、日本での食品の品質管理における標準が設定されることになるでしょう。その時に僕らが提供するのは、HACCAPのルールに添って帳票を作成し、自動で温度を記録して、監査も自動で行うというもの。いずれはそうして、日本中の食品工場の現場の品質管理のデータを集め、あやふやだった品質管理のルールを決めてあげる。そんな役割を担うことができるのではないかと思っています。例えば、ある食材を管理する時に17度に保っていれば大丈夫なのに、13度以下で管理しなければいけないという、過剰なルールを決めている工場があるとします。でも、「17度でも品質的には問題ないという結果が出ていますよ」ということを、実際のデータとして示してあげられれば、その工場がオペレーションにかける人的なコストも変わってくるし、温度を4度下げるためにかけていた電気代も削減することができるかもしれない。食品業界全体の品質管理の標準化を行っていくこと。これが、僕たちが今考えている野望ですね。

TECH LAB PAAKについてお聞きします。PAAKの良いところは、どんなところだと思いますか?

駅から近いところや、軽食や飲み物が無料で提供されているところ、著名な方からメンタリングを受けられるところでしょうか。それから、同期のメンバーとの交流をできるところも、PAAKならではのメリットだと思います。入居当初は温度を測るハードウェアを自作しようとしていたんですが、うまくいかなくて…。それを同期のメンバーの方に相談すると、「それなら、九州にあるこの工場が良いよ」ということを教えてもらったり。PAAKでなかったら知りえなかった情報をたくさん知ることができました。あとは、スタートアップならではの悩みを共有することができたのは、本当に良かったと思っています。

最後に『スマートQC』に興味を持ってくださっている方に、メッセージをどうぞ。

食品業界の方が見ていたら、まずは連絡をしてほしいと思っています。それから、一緒に経営に参画してくれるようなエンジニアも募集しているので、声をかけてくれたらうれしいですね。僕たちはまだまだ駆け出しで、始まったばかりのスタートアップです。なので、今から一緒にチームに入ってくれればやりたいようにできるところが良いところだと思っています。また、僕たちはこの業界では唯一のスタートアップ。人がやっていることと同じことはしたくない、という方には最高の環境だと思います。もちろん人がやっていない分、大変なことは多いと思います。でも、僕たちのサービスはこの先の食品業界の未来を確実に良い方へと変えることができる、唯一無二のサービスになると信じています。この思いに賛同してくださる方は、ぜひチームに参加してほしいと思っています。

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