空間がUIとなるSFのような未来は、すぐそこに──『PING PONG LEAGUE』by COVERインタビュー

カバー株式会社
CEO 谷郷 元昭

空間がUIとなるSFのような未来は、すぐそこに。ソーシャルVRのパイオニアとして世界を目指していきたい。

谷郷さんのこれまでの経歴を教えてください。

新卒で、ゲームを作っていたイマジニアという会社に入社して、ゲームのプロューサーという立場からキャリアをスタートしました。スマホバブルがあったように、当時は『プレイステーション』が出たばかりの頃のゲームバブルの時代で、「何か新しいことをやるんだったら、ゲーム」と言われていたんです。その後、徐々にガラケーが普及して、ガラケー用のサイトを統括するようになっていきました。でも、この事業はいつも携帯会社ありきのものでした。今後はもっとオープンなサービス展開が主流になっていくんだろうなと、その時に思ったんです。そうして次に入社したのは、『@cosme(アットコスメ)』というサイトを運営する会社でした。『@cosme』では、ドラッグストアで販売されているようないわゆる費用対効果の高いコスメが人気なんですが、そういったコスメはなかなかネットでは手に入りません。そこで、人気のあるコスメを自社のサイトで販売するというEコマース事業を新しく立ち上げたんです。その後、インタースパイア(現・ユナイテッド)というモバイル広告の代理店の立ち上げに1年ほど携わって、自分の会社を立ち上げました。

起業をされたとのことですが、これはCOVERを創業する前の会社ということでしょうか?

創業した年の7月にiPhoneが発売されたので、その1か月後に『30min.ランチ検索』というアプリをリリースしました。これは、日本で初めてGPSの情報を活用したアプリで、当時たくさんの人にダウンロードされて、おかげですごく業績が伸びました。

サンゼロミニッツを売却されて、その後に立ち上げたのがCOVERですね。現在の会社を立ち上げたのは、なぜですか?

サンゼロミニッツを売却して、次に何をしようかと考えました。そこで、新しいデバイスにチェンジしようと思ったんです。これまで私は、基本的にコンテンツビジネスをやってきました。その中で、時代に合わせて常に新しいデバイスに向けたサービスを提供していくということをしてきていて。今回も、スマホの次の新しいデバイスにチャレンジしてみたいと思って、VRやARのサービスを提供する会社COVERを創業しました。

それでは、COVERが提供するソーシャルVRサービス『PIN PON LEAGUE』について教えてください。

『PIN PON LEAGUE』は、VRを活用してオンラインで対戦できる卓球ゲームです。でも、実は卓球ゲームと言い切ってしまうと少し語弊があります。私たちは、卓球ゲームというよりもそのゲームを行う卓球場を作っているので。ソーシャルVRサービスは、遠く離れた人と同じ空間を共有できるサービスです。ですので、この『PIN PON LEAGUE』も卓球をするというよりは、同じ会場に集まって同じ時間を共有するという感覚ですね。今までのオンラインゲームはプレイヤーがキャラクターを使って操作するというものでしたが、VRの場合にはプレイヤーがそのまま会場の中に入るという感覚。この辺りが、これまでのオンラインゲームとの決定的な違いだと思います。

その他、『PIN PON LEAGUE』の特徴はどんなところにありますか?

任天堂さんの『Wii Sports』の卓球ゲームは、プレイヤーが球の落ちるタイミングに合わせてスイングすることで打ち返すというものでした。でも、V Rを使った『PIN PON LEAGUE』は、球を打つ時の位置やスイングの速さなどをコントローラーが感知して打ち返すことができるので、本当にその場で卓球をやっているかのような感覚になれるところが特徴ですね。また、会場の中に入るという感覚を楽しむために、プレイヤーは卓球をするだけではなくVR上の会場の中をどこでも歩くことができます。会場は体育館をイメージしていてバスケットボールのゴールもあるので、ボールを投げたりもできます。会場の窓から見える空も常に動いているので、より本物の会場に近い感覚を味わうことができるんです。ゲーム中はボイスチャットで声を掛け合うこともできるので、相手のプレイヤーと同じ空間にいるかのような感覚がより強いと思います。

『PIN PON LEAGUE』以外にも、何か他のソーシャルVRサービスを提供される予定はありますか?

実は今、新たなソーシャルVRサービスを開発しているところです。今度のプロダクトは、ライブ配信。最近は『LINE LIVE』や『SHOWROOM』など、多くのライブ配信サービスが流行っていますよね。これらは、スマホを使って誰もが番組を配信できるという新しいスタイルのサービスです。これと同じことをVRでできないだろうかと考えているのが、私たちの手がけるライブ配信サービスです。世の中で放送されているテレビ番組はほとんどの人がテレビ画面を通じて番組を見ますが、スタジオがあって、そこで観客として実際に見ることができる番組もありますよね。その番組の配信とスタジオ観覧を、VRならVR内にスタジオを作ることで再現できると思っているんです。とは言え、まだまだVRユーザーは少ないですので、VRのヘッドセットやゴーグルを持っていないという方でも楽しめるように、スマホを通じて番組を配信するサービスも展開する予定になっています。

実際にそれらのソーシャルVRサービスを体験された方からは、どんな声があがりましたか?

『PIN PON LEAGUE』に関しては、体験された方から「非常にリアルだ」という風に言っていただいています。TECH LAB PAAKの成果発表会でTechCrunch賞をいただいた時にも、実際に何人かの方には、私たちのオフィスがある中央区箱崎にいるスタッフと対戦してもらいました。TECH LAB PAAKにいるのは自分だけなのにネットを通じて離れたところにいる相手と卓球ができているということに、みなさんとても驚かれていましたね。

VRやARの可能性を、どのようにお考えですか?

昨年リリースされて流行った『ポケモンGO』。これがなぜ流行ったかというと、昔ポケモンをプレイしていた人がARの技術で「本当にポケモンって、いるのかもしれない」と思えたことが理由だと思うんです。このように、ARやVRは好きなコンテンツを楽しむ手段として浸透していくと考えています。また、今年か来年あたりにARを搭載したiPhoneが発売されると言われています。そうなると、これまでVRに親しみがなかった人もよりARやVRを身近に感じることができると思っています。

COVERさんの展望について教えてください。

私はCOVERを立ち上げるまでは、生活に直結したサービスに携わってきました。でも今は、生活に直結するというよりもより楽しめる、よりエンターテイメント性の強いプロダクトを作っていると思っています。どうしてそうしているのかというと、日本から世界にコンテンツを発信できるプロダクトを作りたいと思っているからなんです。日本のコンテンツの中では、やっぱりアニメーションが強いのかなと。ですので、ライブ配信のプロダクトも、人間ではなくアニメーションのキャラクターが番組を配信できるようなプロダクトとして開発しています。このプロダクトで日本発のコンテンツを発信していくと同時に、コンテンツを制作するクリエイターたちの支援も行っていきたいと思っています。そうすることで、より多くの素晴らしいコンテンツが世界に発信できるのではないでしょうか。私たちが目指すのは、VRやARを使って遠く離れた人とも、同じ空間にいる感覚を味わえる世界。そこを目指して、いろいろなプロダクトを開発していきたいと思っています。

ここからは、TECH LAB PAAKについてお聞きします。実際に会員になられて、TECH LAB PAAKにはどんな印象を持たれましたか?

TECH LAB PAAKはオープンな場所ですよね。VRのプロダクトは、なかなか事業化するのが難しい分野ですので、支援を受けられるのならできるだけ受けた方がいいと思っているんです。遠慮していると、全然露出もできない領域ですので。ですから、TECH LAB PAAKにいることでさまざまなメディアへ露出することができたのは、本当によかったと思っています。

VRのプロダクトを展開されているスタートアップの方たちにとって、その辺りがTECH LAB PAAKの会員になるメリットということでしょうか?

そうですね。それから、VRのプロダクトは事業化が難しいので、やっぱり現状でVRに携わられている方はかなり少ないんです。ですので、みんなで知見を共有していかなければいけない業界で。VRの機材を2台置かなければいけない問題もあって、私たちは他の方よりもTECH LAB PAAKにいる頻度は少なかったとは思うんですが、それでもここで同じVRのプロダクトを志すスタートアップの方々と知り合って、知見を共有し合えたことはTECH LAB PAAKならではのメリットだったと思います。

最後に、COVERさんのプロダクトに興味を持ってくださっている方に対して、メッセージをどうぞ。

これまでは、UIはディスプレイの中に収まっているものという考えが常識でしたが、ARやVRは空間自体がUIになるというものです。そういった、まるでSF映画のような世界が、もうすぐやってくると私は思っています。ですので、私たちはそんな世界のパイオニア的な企業として突き進んでいこうと思っています。一緒に働いてみたいという人は、ぜひ声をかけてくれたらうれしいですね。制作に関してだけではなく企画を考えてくれる人も必要ですので、エンジニアでなくても、興味があればお声がけください。

他の記事も読む