VRで日常の生活をすべて置き換えたい ── EmbodyMeインタビュー

Paneo株式会社
吉田一星(右)
田邉裕貴(中央)
香島ユリ(左)

世間の流れが急速に変わるなか、大企業にいてはアクセルを踏み込めない

まず、みなさんのご経歴を教えていただけますか?

吉田さん:3人ともヤフー出身で、自分はずっとエンジニアをやってきました。学生時代は未踏IT人材発掘・育成事業に携わり、その後ヤフーに入社しました。直近のここ4~5年ぐらいは、今の事業にも繋がるようなVRやARの技術をスマートフォンアプリに応用したプロダクトを立ち上げていて、その流れで起業しました。

香島さん:私は元々リクルートホールディングスの新規事業開発組織であるMedia Technology Lab.にいたのですが、その後ヤフーにデザイナーとして入社して、そこで吉田さんと出会い、ずっと一緒に仕事をしていました。その流れから一緒に起業することになりました。

田邉さん(以下敬称略):僕は新卒でヤフーに入社しました。入社当初は社内向けのツールをフロントエンドもバックエンドも全部一から作るなど、いろんなことをやっていました。その後、社内の「ジョブチェン」という制度を利用して、アプリ開発の部署に異動しました。そこからスマホ用のアプリ開発に携わり、iOSのエンジニアをずっとやってきました。ちょうどその頃、サイバーエージェントが主催していたイベントをきっかけに、Unityに興味を持ち始めました。そこで、社内を探してみたところ、Unityを扱っている部署は吉田さんたちのところだけでした。それで部署を異動しようとしたのですが、そのときは残念ながら願いは叶わず、後々に吉田さんに声をかけてもらったことでUnityでVRの開発ができるようになり、一緒に起業して現在に至ります。

ヤフー在籍時から起業するまでの流れを教えてください。

吉田:ヤフーのときに『怪人百面相』というアプリを開発しました。これは自分の顔がそのまま芸能人やマンガのキャラクターに変化してしまうARアプリです。スマホのインカメラで自分の顔の表情を読み取って、リアルタイムに反映するので、本当にその人になった気分を味わうことができます。今流行ってる『SNOW』というアプリと似たようなものだと思っていただければ分かりやすいと思いますが、それを4~5年ぐらい前に世界で初めてやったという感じです。

ARアプリを開発していたということでしょうか?

吉田:そうですね。あと香島さんと一緒に作ったのが、『なりきろいど』というアプリです。こちらもスマホのインカメラで顔の表情を読み取り、それに合わせて動くアバターになりきって通話やチャットができるアプリです。例えば、自分がニッコリ笑うとアバターの目がハートになったりして、そのアバターを通じて他人とコミュニケーションを取ることができます。自分の顔は見せずに表情だけ伝えることができるので、匿名性を保ちながら初めて会う人とも安心してコミュニケーションを楽しむことができるアプリです。

■『なりきろいど』

そのようなアプリの開発をやっていましたが、世間では1年ほど前にSnapchatが『Looksery』というアプリを買収して顔のエフェクト機能をリリースし、かなり流行しました。その後、『MSQRD(マスカレード)』という、ほぼ『怪人百面相』と同じようなことをやっている会社がアプリのリリース後3日目ぐらいでFacebookに買収されました。そうした急速な流れが世間で起きている中で、大企業では、サービスを加速させるアクセルを踏み込むことができないという限界に気づき、結局、自分たちで起業することにしました。

会社を設立されたのはいつ頃ですか?

吉田:2016年の6月です。なので、まだ1年も経っていない新しい会社ですね。

『スター・ウォーズ』のホログラムをVRで実現

ご自身のプロダクト『EmbodyMe』について教えていただけますか?

吉田:映画『スター・ウォーズ』に、レイア姫のホログラムが出てくる有名なシーンがありますが、『EmbodyMe』はそれをそのまま実現しようとしたものです。相手がその場にいるかのような存在感を持ったまま、VR上でコミュニケーションを取ることができます。

Skypeなどで会話や会議をすると話がとても伝わりにくいという経験は誰しもあると思います。Skypeはどうしても会うのが難しい状況でしか使われておらず、会って話す体験とSkypeの間には大きなギャップがありました。現実であるかのような体験ができるVRを活用し、会って話す体験とSkypeの間にあった大きなギャップを埋め、実際に会ってコミュニケーションをする必要性がなくなる世界を実現します。

その手段として、我々のプロダクトは特殊な設備がなくても誰でも使えるというのがコンセプトです。写真1枚だけから自分そっくりそのままの3Dアバターを簡単に作ることができ、そのアバターでグループチャットができます。実際の表情や手の動きも、そのままリアルタイムで、VR内のアバターに反映されるので、本当にその人がその場にいるかのように感じられるコミュニケーションが実現できます。

写真1枚さえあれば、自分以外にもいろんな人に変身ができるので、女性になったり好きな芸能人になったり……ボイスチェンジャーなども組み合わせて、なりたい自分になることができるのが特徴です。

モデリングデータに写真のデータをマッピングしてアバターを生成しているのでしょうか?

吉田:3Dモデル自体を生成しています。仕組みとしては、3Dの顔の学習データから、パラメータの組み合わせであらゆる顔に変形可能なモデルを作り、顔写真の2Dの特徴点を元に、その3Dの顔のモデルのパラメータを推定するということをやっています。

お互いにVRゴーグルを付けてコミュニケーションを取るという形ですか?

吉田:そうですね。最初に出そうとしているのは、Oculus TouchとHTC Vive向けのアプリです。手が使えるというのが重要なので、最初はこの2つで出しますが、DaydreamやPSVR、HoloLensなどにも対応していきたいと思っています。例えば、会議だと、会議室にいる人はHoloLensなどのAR端末をつけて、遠隔にいる人はVR端末をつけて参加するという形になるかと思います。

アプリストアでの配信はいつごろを予定されていますか?

吉田:あと1~2ヵ月後には配信できると思います。最終的にはSkypeの完全な置き換えになるものを目指していて、みんながVRやARのデバイスを持つ時代になれば友達同士でやり取りをするLINEなども全部それに置き換わると思っています。しかし、まだVRはゲームユーザーしかいないような状況です。そうした中で、最初に出すプロダクトとしては初めて会う人と、楽しいコミュニケーションを取れるというところにフォーカスしています。

たとえば、タケコプターで空を飛んだり、かめはめ波を打てたり、スモールライトで小さくなったりというように、現実世界ではありえないことをVR空間上で体験できるのが価値の1つだと思っています。

それからVRの中の世界で起きていることや情報をリアルな場で共有できるということも重要だと思っています。VR空間で、例えば一緒に歌を歌ったり、ダンスをしたり、漫才をする様子を動画に撮って、そのままSNSにシェアすることができる機能をつけています。

プロダクトとしては、アバターだけではなくてボイスチャットのようなコミュニケーション機能も含まれているのですか?

吉田:もちろんそうですね。本当にそのままコミュニケーションが取れる感じになります。

PAAKの居心地の良さを今のオフィスでも実現したい

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TECH LAB PAAKはどのような場所だと思いますか?

吉田:まず、居心地がいいですね(笑)。スタッフの方も親切で、スタートアップにはありがたいです。卒業して現在は違う場所にオフィスがあるのですが、そこでこのTECH LAB PAAKの居心地の良さをどう実現するか? という部分を参考にさせてもらっています。

PAAKにはVRコースの一期生で入ったのですが、日本ではまだVRのスタートアップは多くありません。しかし、ここにはそのうちのいくつかが一緒にいたので、結構刺激になりました。

香島:それとPAAKに入居されていた方の中に、元ヤフーや元リクルートの同僚などがいたので、またみんな集まっちゃったねという話をしていました(笑)。

最終的に目指すイノベーションは「日常の生活をすべてEmbodyMeで置き換える」こと

今後どんなイノベーションを起こしていきたいですか?

吉田:EmbodyMeで遠くにいても実際に会うのと同じコミュニケーションが取れれば、お金も時間もかかるので、実際に会う必要性はなくなっていきます。そうなると、人間の生活スタイルは大きく変わります。会社に行って仕事をする、洋服を買いに街に出かける、学校に行って勉強をするなどの日常の行動がEmbodyMeで置き換わる世界を実現していきます。

今後、EmbodyMeのアバターが様々なサービス、ビジネスで使えるようなプラットフォーム展開を行う予定です。例えばHoloLensを使って遠くからでも実在感をもって会議ができるようなB向けサービスを展開したいと思っています。また、例えば、オンラインで洋服を買う場合、実際に手に取ったり試着ができないという課題がありましたが、EmbodyMeの自分そのままのアバターで洋服を手に取って試着ができれば、リアル店舗に行く必要性がなくなります。

今年は展示の機会を増やしていきたい

最後に、このプロダクトに興味を持った方に対してメッセージをお願いします!

吉田:言葉で説明しても、実際に体験して頂かないと伝わらない部分があるということを実感しています。まずは近日中にアプリをリリースする予定ですので、対応デバイスのOculus TouchやHTC Viveをぜひご用意頂いて、リリース後すぐに体験頂けると嬉しいです。あと今年は展示の機会も増やしていきたいと考えているので、その時にもぜひ体験していただきたいと思います。よろしくお願いします!

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