自動で展開・自立する折り紙式の居住施設で、宇宙の暮らしを現実に。

宇宙居住施設』高橋 鷹山さん(株式会社OUTSENSE)※現在登記準備中

——高橋さんが宇宙建築に興味を持ったきっかけや、これまでの経歴を教えてください。

祖父が大工だったので子どもの頃から建築に興味があり、将来は建築家になりたいと思っていました。そんな中で高校生の頃にある一冊の本に出会ったことがきっかけで、宇宙建築という分野に興味を持つようになったんです。その本の中では、海の中のホテルなど面白い構想案がいくつか載っていて、その中の一例として月面居住空間の構想案が紹介されていて。それを初めて見た時にすごくワクワクしたのを覚えていますし、まだ誰もやったことのない月面に家を建てるという構想に感動を覚えました。

そこで、まずは建築を学ぼうと名古屋の大学に入学しましたが、このまま建築を学んでいても宇宙にはたどり着かないのではと思うようになり、3年生の時に宇宙建築を専門に教えている東海大学の教授のもとに編入学し、学び始めました。そこでは、宇宙建築を一緒に目指す仲間を集めるためのTNLというコミュニティ団体の立ち上げも経験しました。そんな中で将来、僕が月面に家を建てるためにはどうすればいいのかと具体的に考えるようになったんです。しかし、当時は月面に家を作るという事業をやっている会社や団体はどこにもありませんでした。それなら自分でやるしかない。そう思うようになって、起業という道を目指すようになりました。

 

——企業を志してから実際にどのような経緯を経て、OUTSENSEを立ち上げられたのでしょうか?

大学卒業後は同大学の大学院へと進学し、そこでJAXAの共同研究員としての経験もさせてもらっていましたが、半年ほどで大学院は辞めてしまいました。そして、将来起業をする時に備えて学ばせてもらえればという思いで、月面探査のためのローバーを作っているispaceという会社にインターンというかたちで入社させてもらいました。それが、昨年の8月のことです。現在は、建築や宇宙研究に携わる大学生や院生、建築や宇宙のビジネスに携わるさまざまなメンバーと一緒に登記に向けて準備をしているところです。

 

——OUTSENSEが研究・開発を行う「宇宙居住施設」のプロジェクトは、どのようなものなのでしょうか?

OUTSENSEは、折り紙式の宇宙居住施設を開発しています。ロケットに乗せることができる容量には制限があり、これまでは大きなものを宇宙に輸送することは難しかったんですが、僕たちが作る宇宙居住施設は空間を縮めることができるソガメ折りという折り紙の技術を採用しています。なので、人がゆったりと暮らすことができる大きさの居住空間でも、小さく折り畳んで輸送することが可能になっています。現在、この技術で特許申請も行っているところです。一般的に宇宙建築というと、インフレータブル構造という風船のように膨らませる技術が知られていますが、これでは人が宇宙で暮らすための十分な強度を保つことができませんでした。

そこで僕たちは、硬いパネルを用いた折り紙式の構造物にすることで、この問題を解決しようとしています。例えどこかの壁が破損してしまったとしても、3Dプリンティングしたパネルを一枚取り替えれば簡単に修復できるという仕組みにして、万が一の時も安心できる構造にできればと考えています。

 

——その他にOUTSENSEが作る宇宙居住施設の特徴やメリットがありましたら、教えてください。

僕たちの作る宇宙居住施設は、パネル部分にあらかじめ暮らしに必要なものを必要な場所に備え付けることで、月面で展開した時にすぐに人が暮らしをスタートできることが特徴の一つです。最初のうちは、月面探査をする人たちに向けた施設を想定しているので、国際宇宙ステーションのような設備になると思います。そして、最終的には気持ち良くベッドの上で寝られたり、シャワーを浴びられたりと、地球での暮らしと変わりのない快適な生活を送ることができる居住施設を目指しています。

また、OUTSENSEの宇宙居住施設は、人の手を使わずに自動で自立展開できるところも特徴の一つです。僕たちが自動自立展開にこだわる理由には、人が宇宙空間でものを作るのには大きく分けて二つの障壁があるからです。一つは、月面には宇宙放射線という有害な放射線が降り注いでいるため、人体にとってリスクがあること。もう一つは、人を宇宙に送り込んで居住施設を組み立てるとすると、家を建てる際の倍以上のコストがかかってしまうであろうことです。自動自立展開式にすることで、僕たちはこのような問題を解決したいと考えています。

 

——高橋さんが現在想定している利用シーンには、どんなものがありますか?

人が暮らす居住施設として利用されるのは、2030年頃になるのではないかと見込んでいます。その頃には、人が宇宙に行き始めるのではと考えているからです。それより以前は、発電池を保管しておく場所としての利用もできると思っています。また、最近の宇宙開発の流れの中に、宇宙空間を探査して資源を集めるという取り組みが進んでいます。その資源を貯めておける倉庫のような役割としても、利用できるのではないでしょうか。

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——最後に、今後のOUTSENSEのビジョンを教えてください。

僕たちOUTSENSEは将来、人が宇宙で暮らすことが普通になる時代の一端を担っていきたいと思っています。折り紙式の居住施設は、そのための最初のフェーズで必要になるのではないでしょうか。

また、OUTSENSEが作る折り紙式の居住施設は、宇宙だけでなく地球上でも応用できる構造になっています。例えば、災害時や緊急時に仮の居住空間として役に立つことができるかもしれません。あるいは、秘境の地に快適に暮らすための居住空間としても使うことができるかもしれません。そうして、人はどこにでも住むことができる。そんな新たな文化を作っていき、従来の常識を破った新しい価値を生み出していける存在になっていきたいと思っています。

 

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