ハッカソンから生まれたアイデアが心停止者の命を救う社会課題解決アプリに――玄正慎さん、橋本翔伍さんインタビュー

代表取締役 CEO 玄正慎
エンジニア 橋本翔伍
Coaido 株式会社

iPhoneの発売に感銘を受けてアプリ開発に目覚める

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まず玄正慎さんの経歴について教えていただけますか?

弊社は、緊急的な共助を成り立つ仕組みを作り、命を救うということに取り組んでいる、Coaido(コエイド)というちょっと変わった社名の会社です。社名の意味は、co + aid + do というこの3つの言葉を足し合わせた造語で、共助という概念を表している言葉です。私が代表の玄正と申します。
私自身のバックグランドは福井県福井市に生まれ、大学から横浜に出て横浜市立大学に入学しました。卒業後にヨコハマ経済新聞というインターネット新聞の立ち上げプロジェクトに参画し、そこで記者となり、地域新聞の記事を書いていました。そのあと一転して不動産会社に入り、住宅販売の営業をしていたんですが、そのころにiPhoneが発売されて、それに非常に衝撃を受けて、iPhoneアプリを作りたいと思うようになり、アプリプランナーとして活動してきました。
アプリを作るにあたり、まず最初にプログラミング言語Objective-Cを習うスクールに行きました。しかし、私自身元々エンジニアではなかったので、そんなにすんなりとは行かずにですね、ただ元々企画が得意で、作りたいアプリはいっぱいあると(笑)。というところで、スクールで知り合ったエンジニアと一緒にアプリを作るということをやっていました。
それで個人でアプリをリリースして、その収益で生活をするというのを5年ぐらい前から始めて、どの組織に所属するでもなく、いろんなイベントに参加するようになりまして、2013年の夏頃からハッカソンに出るようになり、たまたま参加した「スーパーハッカソン」で、この心停止の課題解決のアプリを発案したところ、そのハッカソンで優勝して、その翌年に起業したという経緯になります。

では、iPhoneの発売がきっかけになったということですね。

そうですね。なんていうか自分がやりたかった世界みたいなものが、iPhoneアプリに凝縮されていると思っていたんですね。学生時代に写真や映像制作をやっていたりとか、ネット新聞でも、横浜って文化芸術振興に力を入れていて、クリエイターとかアーティストとかどういうふうにやっているのかを取材する立場で見たりしていて。その中で、自分のやりたいことは領域的にいうとビジネスでもないし、ゲームでもないし、アートでもデザインでもないし、その中間領域みたいなものが本質的なものじゃないかなと考えていて、でもそれってなんなの? と思っていたのですが、iPhoneが出て、まさにこれだなという感じがあってですね、しかも個人で作ったアプリを世の中に公開できるという、非常に素晴らしいプラットフォームで、それで自分の考えたアプリを出したいと思ったんですね。

そこからプログラミングを覚えようというのがすごいですね。

まぁ最初にObjective-Cを覚えようというのが無謀という話もありますけど(笑)。いや-、ぜんぜんわかんなかったです(笑)。なのでその辺、もうコードを書くのはすべてエンジニアにお任せして、逆に自分はコーディング以外の、企画やデザイン、販売戦略など、そういうことをやっています。

で、横にいる橋本はですね、まだ2月に弊社に入社したばかりです。

では、橋本さんの経歴のお話もお願いします。

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あんまり面白くないですけど(笑)。私は玄正とは違って、新卒からわりと普通のサラリーマンで、今回の職場で3社目になります。で、大学は、経営学部でちょっと文系でぜんぜん違うことをしていたんですけど、新卒の就職活動のときに、エンジニアに向いているかも知れないなと思って、エンジニアを志望してメーカー系の会社に入り、そこでプログラミングを一から勉強しました。
で、そこで2年間ぐらいいろいろやってたんですけど、わりと上流工程といいますか、設計とかテストとか、そういったことをやっていて実際にプログラムで手を動かすような仕事はなくて、ちょっと面白くなくて、で、同時にiPhoneが出まして、Androidとかスマートフォンが普及してきて、で、社内の勉強会に積極的に出るようになりまして、自主的にスマートフォンのプログラミングをやっていました。で、個人でも会社とは関係ない友人たちとアプリを作ったりしてたんですね。
そういったことからプログラミング自体も面白いなと思うようになって、で2社目にはプログラミングができる会社にプログラマーとして入社しました。で、そこではiPhone、Androidのプログラミングをずっと2年間がっつりやってました。
ただその会社での仕事は受託開発がほとんどで、ま、お客さんがあって、最終的にはお客さんが決めたものを作るということで、実力は付いたんですが、なかなか思うようにいかないなぁということがあって、次はサービスを作りたいなぁと思って転職活動していたときに、弊社の求人を見つけて転職しました。

ハッカソンで発案したアイデアが起業へとつながった

それでは現在のプロダクトを開発するに至るまでの経緯を教えてください。

実は「スーパーハッカソン」で偶然、この心停止に関心を持ったんですが、「スーパーハッカソン」は特にそういった分野のハッカソンではなく、そのときに置かれていたテーマは、「○○における20秒の問題を解決する製品」というのがテーマだったんです。
で、その20秒というテーマが与えられて、その秒数でできるアイデアをばーっと出して、何が20秒でできる最大の価値なのかと考えたときに、人の命を救う20秒が最高の20秒じゃないかってそのときたまたま思ったんです。そこで初めて、それって救命救急なので、救命救急に関心を持って、でもその課題は何なのかということすら自分に知識がなかったので、深くわからなかったんですよ。
なので、そのハッカソンの現場でGoogle検索で調べるところからスタートしまして(笑)。そこで1日に心臓突然死者が200人も日本にいて、でもそういうときにAEDという電気ショックを与える機械を素早く使うことができると、救命率が大幅に向上するんですけど、そのケースが非常に少ないということを知ってですね。これはアプリを使って周りに助けてもらえばいいんじゃないかと、そういったことを発案したことがきっかけでした。

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もう少し具体的にいいますと、心臓が止まると人は意識を一瞬で失ってしまうので、もう周りの人が助けるしかないわけですね。で、そういった人を目撃した人は救急車を呼びますよね、あと、そこで救急車が来るまで心臓マッサージをする人がいるケースが、今、半分ぐらいいるんですけど、それでも救命率は10パーセントぐらいなんです。
救急車の平均到着時間はいま8.6分なんですが、電気ショックで心臓を動かすまでの時間は非常にスピードが大事でして、1分で生存率が10パーセントずつ下がっていくといわれてますので、救急車を待っているとほとんど助からないんですね。到着する頃には、手遅れになるケースが多い。しかし救急車より早くAEDが使えると、救命率が50パーセントに上がるんですね。

AEDは、日本は非常にたくさん設置されていて、現在35万台以上とあるいわれてます。しかし肝心なときに使えてるかというと、使われるケースは4パーセントしかないんですね。残りの96パーセントは、使うことができて改善の余地が大きくあります。
そこでこのアプリで素早くAEDを運んでもらう仕組みを作れば、解決するんじゃないかと発想したところで、このプロジェクトがスタートしたということになります。

いろいろとどういう形でサービス展開すべきかと模索した中で、一つの仮説が119番通報と連携した仕組みになります。まず、心停止者を目撃した方が、人が倒れましたと119番通報します。そうする消防指令センターに電話がつながります。

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ここで救急ですと、どういう状況かを聞き、住所を聞いて、その場所に救急車が向かいます。通報者へのヒアリングで、患者は心臓が止まっている疑いが強いなと消防の方が判断したときに、弊社が開発したiPadのアプリに倒れている位置や情報を入力していただき、送信していただきます。そうすると、すぐにPUSH通知が受信アプリを持っている人に届いて、自分の近くで心停止患者が発生しているというという情報を知って、その人が動ける状態であれば周りのAEDを持って現場に行っていただきます。それより救急車よりも早く現場にAEDを持っていき電気ショックを実行できれば、救命率の大幅な工場が期待できます。これがファーストレスポンダーシステムと一般にいわれるものなんですね。
このファーストレスポンダーシステムを自治体に提供するという実証実験を昨年10月より半年間行いました。

受信アプリの基本機能
受信用のアプリはAED FRアプリと呼んでまして、これはアプリといいながら、一般公開はしていないもので、登録者のみに限定配布をしております。
登録者は、実証実験を実施した自治体の消防職員さん、消防団員さんにこのアプリを持っていただいて、駆けつけを行っていただきました。

まだ救命事例というのは出てきていないんですけど、AEDを持って救急車より早く現場に到着したという事例は出ています。しかし実証実験によって見えてきた課題もあり、今後システムのさらなる改善をして対応していきたいと思っています。

実際のアプリはどのような機能があるんでしょうか?

まず送信用の弊社のアプリが入ったiPadは、119番通報を受ける消防指令センターに置かせていただき、心停止の際には、ここから発信していただくということになります。

受信アプリは、どういう機能があるかといいますと、先ほどのiPadで発信されたPUSH通知を受け取ります。

PUSH通知を受け取ると、まず自分が心停止発生現場からどれぐらいの距離にいるかがわかります。そこで、駆けつけ可能ですかという問いになりますので、自分が行けるなと思ったら「はい」をタップすることで、詳細情報にアクセスできます。
詳細情報は駆けつけに必要なので、部屋番号だとか表札名とか、そういった駆けつけるために必要な情報を表示しています。これによってどこに行けばいいかがわかり、次はAEDの確保ということで、地図上に付近のAEDの位置が表示されます。

AED情報は、そのAEDが何時から何時まで使えるといった、設置場所についての詳細情報が表示されます。ちなみに24時間取得できるAEDは、アイコンの色を変えてわかりやすく表示しています。

AEDのアイコンをタップすることで、取得表明をすることができ、そして現場に行っていただくという流れになっています。

気がつけば、社会課題を解決するアプリに成長

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ハッカソンから起業するまでの経緯を教えてください。

「スーパーハッカソン」をきっかけにプロダクトを発案したんですが、そこでは時間が足りずにデモができるプロトタイプの完成まではできなかったんですね。そこで、その翌週に、リクルートの「Mashup Awards」のハッカソンがあったので、そこにもこのプロダクトを持っていって、そこで実装をして、デモができるものが完成しました。どちらもこれで優勝させていただきました。これがプロジェクトを続けるきっかけとなりました。ですので、このプロジェクトが生まれたときにもリクルートさんにお世話になっています(笑)。

「Mashup Awards」のいいところは、非常に間口が広いところですよね。普通は、ほかのハッカソンで取り組んだものを持ってくるのは、NGですよね。「Mashup Awards」のハッカソンは、そういうところを気にせずにOKであるという懐の広いもので、それが翌週にあったというのはタイミングがよく、そこで完成させることができました。

その後は、そのデモを持っていろいろなコンテストに応募して、賞もいただきました。自分では、最初、まったくAEDに興味関心がなかったところからスタートをしているので、まさかこのプロダクトを持って起業するなんて思っていませんでした。しかしコンテストで賞をいただいて、「応援しています」とたくさんの人から声を頂き、またそこで有識者の方にアドバイスをいただいたりしているうちに、少しずつ自分の中でこのテーマが大きくなっていきました。それで起業にいたるんですが、自己資金がなかったので起業をしてすぐにクラウドファンディングで開発資金を集めて、苦労はしましたが、3ヵ月間で300万円以上の資金が集まり、なんとか目標金額を達成させることができ、実験ができるアプリの開発を進めることができました。

では、TECH LAB PAAKに参加するいきさつについて教えてください。

CIVIC TECH FORUM 2016 でパネル登壇

このTECH LAB PAAKがオープンしたときに、その第1期の会員に選ばれました。

TECH LAB PAAKについては「Mashup Awards」に参加したきっかけで、そういうものがオープンすると聞いていたので、実際に自分たちも入りたいとお願いしようと思っていたんです。そこで「Mashup Awards」の忘年会に参加した席で、イベントの最後にお願いに行こうと思っていたら、忘年会の途中に「Mashup Awards」の総括のような発表があって、そこで、PAAKの1期メンバーを選びましたというサプライズ発表があり、ハッカソンで優勝した僕らも選ばれていて、参加することができました(笑)。何の予告もなかったので、これは本当にビックリしましたね。

PAAKは通常は半年間で卒業なんですけど、その1期の終了の時点の発表で優秀プロダクトに選んでいただきまして、3期としてさらに半年間利用させていただいています。

自社のオフィスはあるものの、会議スペースがないので、ここを使わせていただいています。会議室の壁全面のホワイトボードで打ち合わせも効率的に進みますし、、とても便利に利用させていただいています。

あとPAAKではいろいろなイベントが開催されるので、そうした場に何度も参加させていただいてます。イベントでで知り合った方々からアドバイスをいただくことも多いです。

それではプロダクトの今後について教えてください。

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これらは経過のお話なんですが、TECH LAB PAAKに参加後に、経済産業省の「先端課題に対応したベンチャー事業化支援等事業」に採択されて、予算をいただいて、宮城県の石巻市でアプリの実証を含め、ベンチャーがどうやって地域に根付くかといった実証を1年間行ってきました。
それで、石巻の子供たちにIT教育をしている一般社団法人イトナブと一緒に石巻でアプリの体験イベントをやったり、AEDの普及啓発をどうやったらうまくいくか考えて試したりしました。また、こうしたアプリを作るには、AEDの位置情報や使用可能時間のデータが非常に重要なのですが、多くの自治体がそのデータを持っていません。石巻もそうだったので、まずはAEDをマッピングするところから始めて、実際に町歩きをして、ここにAEDをありますという情報を地図上にマッピングをして、何時から何時まで使えるといった情報を確認したりといった作業を行いました。

それから「SUSANOO」という社会起業家のアクセラレーションプログラムの第2期メンバーに採択されました。いわゆるスタートアップ向けに提供されているようなアクセラレーションを社会起業家に対して行っていくプログラムなんですが、そこに参加してで社会起業家の仲間ができて、いろいろな方からアドバイスを受けることができ、ビジョンが大きく開けていきました。

また「SVP東京 2015年度 投資・協働先団体」にも採択されました。これは2年間にわたって支援いただけるプログラムで、そこのいろんな専門性をもった方々で構成されている支援チームのメンタリングを受けて、現在、プロジェクトを進めています。

ソーシャルスタートアップでスケールを目指していく

これから起こしていきたいイノベーションがございましたら教えてください。

SUSANOO 2015 Fall 記念撮影

私としてはスタートアップという考え方が重要だと思っています。そもそもスタートアップとは何かというと、イノベーションを起こす組織のことなんですね。イノベーションを起こして、それが今までの人々の生活とか価値観とか、そういった常識を変えるようなもの、それによって今までにない新しいビジネスが立ち上がり、それに対して投資が入ることで、短期間でスケールして世の中に大きなインパクトを与えていくもの、それがスタートアップだと思うんですね。

私たちは自分たちのことを「ソーシャルスタートアップ」と呼んでまして、いわゆる社会課題を解決することをビジョンに掲げて、かつそれを株式会社という法人形態で、スタートアップという方法で実現していきたいと思っています。

社会課題の解決って、NPOのような非営利型の組織で取り組んでいくケースが多いですが、その方法ではスケールするまでに非常に時間がかかると思います。それに、私たちが取り組んでいる課題は大きく複雑であり、何が解決方法の正解なのか、まだたどり着いたわけではなく、これからも仮説をつくり検証して、ピボットを重ねて正解を見つけていく必要があります。ですので、なにをやれば解決できるかの正解がわかっているけど、その収益化が難しいので、寄付や会費、助成金など公的な支援を集めて運営していくNPOや非営利型の組織のやり方にはなじみません。私たちの活動は研究開発の領域が非常に強く、失敗のリスクはあるものの成功したときのインパクトが大きく、その期待に対して資金が集まるスタートアップの領域だと思っています。そのように、イノベーションを起こして投資を呼び込んで、短期間で社会課題を解決する方法がありうるのではないかと考えています。

「緊急情報をシェアして命を救う」という弊社のビジョンや、ソーシャルスタートアップという社会課題の解決方法に賛同し、一緒に取り組んでくれる仲間を募集しています。

入社したばかりの橋本さんは、そんなプロダクトについてどういった思いですか?

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プログラマーとか技術者って、サービスを作るのが好きな人と、技術が好きな人の、だいたいふたつにわかれるかなーって、ずーっと思っていたんですけど、私はサービスを作るのが好きなほうで、おそらく他の技術者ほどは技術自体に興味がないんですよね。面白い物を作れるとか、人の役に立つ物を作りたいとか、そういったところで仕事をしていきたいなぁと思っていたんですね。

で、ここ2、3年、ITブームで、ベンチャーやスタートアップと呼ばれる会社がいろんなところに出てきて、その中のひと握りかもしれないですけど、会社が大きくなったり、インパクトをもたらしている会社がいくつかあって、その活動をずっと外から見てて、あ、面白いなと思っていたんですね。で、職活動をして、いろんな会社さんを回らせていただいて、そんな中で玄正さんのお話を聞く機会があって、直感的にこれは難しいなというふうに、解決にはなかなか先が長そうだと思ったんですけど、ただ事業の内容自体はひとつも否定することがなかったし、難しいそうだけど、企画自体は動いていて、いろいろな方も支援されているということであれば、事業としてこのまま進んでいくだろうなと思ったのと、いい結果か悪い結果かはわからないけど何かしらの結果は出るだろうなと思って、その先がどうなるか見てみたいというのがあって、入社したというのが大きいですかね。

ご自身は、どんなサービスを作ってみたい方なんですが?

あー、そういわれると、困ったことにそんな、私自身はこれを作りたい、あれをやりたいというタイプじゃないんですね。こー、自分で企画して、何かをやれっていわれても、たぶん困るんですね。どちらかというと、人と一緒にやりながら、それをサポートするほうかなという感じでずーっと会社に入って思っていて、であれば、その共感できるところを見つけて、そこで全力を尽くすのがいいだろうっていうのがありますね。

橋本さんは、ハッカソンには興味はおありですか?

興味はあったんですが、前職では忙しくって、なかなか外に出て活動する機会がありませんでした。この前、初めて出させていただきました。

この前、初めて出たばっかりなのに、いきなり賞を取ってましたね(玄正さん談)。

最後に、このプロダクトに興味を持った方にメッセージをお願いします。

会社としてアピールしたいことになってしまいますが、2月にMistletoe株式会社より資金調達を行いました。現在、開発体制の強化のためサーバーサイドのエンジニアを募集しています。今回の話にご共感いただけた方、ぜひ一緒に社会課題の解決について取り組みましょう!!

ありがとうございます。

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