魔法のように、あらゆる家電をノックでコントロール──MagicKnockインタビュー

MagicKnock
伊藤 輝

魔法のように、あらゆる家電をノックでコントロール。

伊藤さんのこれまでの経歴を教えてください。

中学生の頃から独学でウェブデザインの勉強を始めて、16歳くらいからウェブサイトなどを作るようになりました。プログラミングを本格的にするようになったのは、その頃からです。18歳の時に今のLeapcastという屋号で開業して、ウェブサイトの受託制作の仕事を請け負うようになりました。今現在も、アプリの受託制作や広告配信システムの構築といった仕事を個人で受けています。その傍ら大学では、人とコンピューターの間にあるインターフェースの研究に取り組んでいます。なぜ、インターフェースの研究をするようになったかというと、僕自身は子どもの頃からハイテクなことが好きだったので、コンピューターやIT技術を便利に活用してきました。でも、身近にいる家族や友人がコンピューターや機械の操作に苦戦する姿を見て、ITに詳しい人には簡単な操作でも、ITに詳しくない人にとっては難しいと感じることもあるとわかったんです。そこで、人工知能やディープラーニングといった学術的なテクノロジーもおもしろいんですが、僕はそういったITの恩恵を受ける際に人が触れるインターフェースの部分を、もっと簡単にもっとわかりやすくすることが大切なのではとこの研究を始めました。

インターフェースの研究として、具体的にどのような取り組みをされているのでしょうか?

僕が今行っているのは、テレビのリモコンをなくすという取り組みです。こんなにもテクノロジーが進化している中で、リモコンは昔からほとんどかたちが変わっていません。最近のものは特にボタンの数が多くなっていて、録画した番組を見たいと思っても本来なら簡単な操作で済むのに逆に複雑な操作が必要になってしまい、直感的に操作しづらくなっているかと思います。そんな問題を解決して、もっとテレビを簡単に操作することはできないだろうかと研究を行ってきました。その時、リモコンやスマホといったデバイスに依存しないで、本来はネットにつながっていない実世界のものに触れることによって間接的にテレビを操作できれば、日常にすっと馴染むことができるのではと気づきました。今現在開発中の『MagicKnock』は、そんな実世界インターフェースの研究の一環として取り組んでいるプロダクトです。

『MagicKnock』とは、どんなプロダクトなのでしょうか?

『MagicKnock』は机や壁などあらゆる平面に設置することで、その机や壁に対するノックやタップを検知し、テレビや家電を操作できるワイヤレスデバイスです。先ほども言ったように、リモコンはボタンの数が多くて操作がしづらく、いざ使いたいと思った時に手の届くところにない、ということも多いかと思います。『MagicKnock』なら、手や足が届く平面にこのデバイスを置いておくだけで平面全体がリモコンの代わりになり、ノックすればスムーズにテレビや家電を操作することができるんです。ノックの強弱も検知でき、軽くタップすると青色に、強く叩くと緑色にデバイスが光ります。人によってノックの強弱は異なりますよね。その違いを学習して検知してくれるので、力の弱い方や叩くのは面倒だという方にも便利に使っていただけるかと思います。

実際に使う時、ユーザーはどのように操作するのでしょうか?

従来のテレビのリモコンは、上下キーや決定キーなど何十もの信号入力を必要としていましたが、『MagicKnock』とつないで使う『MagicTV』はたった二つの信号入力で操作することができます。具体的にいうと、普通のノックをすればメニューが動いて、強いノックをすると選択をするという感じになっていて、テレビの画面を見ながら操作をしていきます。連打にも反応するので、タタタタタッという軽い感じでスクロールするようにメニューを動かしていくことができます。この『MagicTV』は家電とも連携できるので、部屋の照明などのオンオフも操作することが可能です。「ノックだけで操作できるということは、誤作動も多いのでは?」と聞かれることがありますが、弱いノック三回、強いノック一回を連続で行った時にだけ起動するような仕組みになっているので、机にコップを置いた時に反応してしまうということは起こりません。

『MagicKnock』の価値や差別化ポイントは、どんなところにありますか?

操作をする時に、音声認識のように反応が遅れることがないですし、喋らなくていいというところが一つの価値であると考えています。音声フィードバック機能もあるので、テレビが点いていない時に音楽を流したいと思った時にも、「クラシックミュージック」「ハウスミュージック」などといった音声に従って、テレビ画面を見ずに操作することもできるんです。また、PAAKに入居してからはエスアイアイ・セミコンダクタという半導体メーカーと提携して画期的な機能を追加しました。高性能な圧電素子を導入したことで、ノックをした際の振動による微弱な発電を活用して論理回路のスイッチングができるようになったんです。もともと『MagicKnock』は、微弱な信号にしかならないノックというものを検知するために待機中もずっと電力を流しているような状態で、消費電力がかさみ、あまり実用的ではありませんでした。でも、この仕組みを導入したことによってほぼ無電源でデバイスを起動できるようになり、世の中にあるIoTデバイスと一線を画すものになりました。

『MagicKnock』の今後の展望を教えてください。

手のひらサイズの丸いプロトタイプは昨年の秋に完成したものですが、ほぼ無電源で起動できるようになったので、今後はクレジットカードのような大きさ、薄さのカード型デバイスにしようと考えています。シールのような感覚で机や壁に貼って、誰もが手軽に使えるものになればと思っています。しかし、このかたちがゴールではないと思っています。今の『MagicKnock』は、人間がコンピューターを使いやすくするためにはどうすればいいのか、という僕の研究過程の一つのアウトプットに過ぎないプロダクトです。もしもデバイスがなくても同じことが可能になれば、デバイスに依存しなくてもいいし、ノックよりも簡単な信号入力の方法があれば、他の方法を取り入れてもいいかもしれない。普通の女子高生や普通のおばあちゃんがコンピューターを簡単に使えるためのインターフェースを、これからも追い求めていきたいんです。当たり前となっている最新のテクノロジーに満足せず、疑い続けること。この信念を大切にこれからも新しい世界へと飛び込んでいきたいですね。

TECH LAB PAAKについてお聞きします。PAAKの良いところは、どんなところだと思いますか?

良質なコミュニティーがあるところだと思います。高校生の時もコワーキングスペースを利用していて、そこも地元ではけっこう熱い場所だと思っていたんですが、比較的クリエイターの方が多く、ビジネスの話はあまりできなかったんです。でも、PAAKにいらっしゃる方はみなさん、クリエイターでありながら起業家魂を持ち合わせた方ばかりで、本では学ぶことのできないビジネスのお話をたくさん聞くことができました。メンバーの中には僕よりも年上で経験の豊富な方もいらっしゃれば、同じ世代の方もたくさんいらっしゃるので、そういう方たちとコミュニケーションを取ることで、PAAKにいる時間がより刺激になりましたね。

実際に、刺激を受けた出会いのエピソードはありますか?

たくさんありますが、一番印象に残っているのは、6期生にいらっしゃったOrarioの芳本くんとの出会いです。僕は根っからのエンジニアなので、モノで勝負をする会社のトップが技術畑出身ではないことに、違和感を覚えることが多かったんです。というのも、トップの人間が技術のことを全て把握していなければビジネスとしてうまくいくわけがないだろうと思っていたからです。でも、その考えは芳本くんに出会って180度変わりました。彼は当時は学生で、資金も豊富にあったわけではなかったと思うんですが、エンジニアの方は彼の人柄やビジョンに惹かれてチームに入って、結果的に事業を軌道に乗せていっていることに驚かされたんです。彼には仲間が自然と集まってくるような、人としての魅力があるんですね。僕自身も、彼に会うたびにすごいなあと感心させられています。同じ学生ベンチャーとして、彼のリーダーシップや人柄を見習いたいと思っています。

最後に、PAAKに応募しようか迷っている方へメッセージをお願いします。

PAAKにいる方たちは本当にすばらしい方たちばかりで、とても個性的な方も多いです。事業内容も「これってビジネスとして成り立つの?」と思ってしまうような一風変わったものもあって、普段は交流できないような方からたくさんの刺激を受けられる場所だと思います。そういった方たちの熱い思いを聞いたりできる環境は、PAAK以外にはないですね。やっぱり、他の企業が何を考えているのかや新しい情報をインプットできる環境があることは、僕のようなエンジニアには大切なことだと思うんです。なので、迷っている方がいたらまずは応募してみることをおすすめしたいです。

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