猫に負担をかけず、毎日の健康を見守る“猫ファースト”なIoTトイレ。

『toletta(トレッタ)』堀 宏治さん(株式会社ハチたま)

 

——堀さんのこれまでの経歴を教えてください。

もともとはIT関係の仕事をしていましたが、2003年にペット事業を始めました。ペットを幸せにして飼い主も幸せにしてあげたいという思いで、当初は犬のトリミングサロンやホテルの経営などを行っていたんですが、実店舗の経営はなかなか思うようにいきませんでした。そんな時に猫の飼い主に話を聞くようになったり、社内に猫好きのスタッフが増え始めたりして、徐々に猫に触れ合う機会が増えていって。そこで、スタッフが自分たちの猫のために欲しいと思うものを作ってみようということになり、“猫が幸せになれば、人はもっと幸せになれる”という理念を掲げて、再スタートしました。そうして、昨年の8月にスタートしたプロジェクトが『toletta』です。

 

——『toletta』とは、どのようなサービスなのかを教えてください。

『toletta』は猫の体重とおしっこの量、回数を自動で計測できるIoTトイレとスマホのアプリを連携することで、猫の健康を見守るヘルスケアサービスです。ご存知かもしれませんが、猫は腎不全や尿結石、膀胱炎など泌尿器系の病気にかかりやすい動物です。実際に多くの猫が泌尿器の病気にかかり、命を落としています。そんな猫の飼い主にとって一番嬉しいのは、病気にかからないこと。『toletta』はそんな飼い主や猫たちのために、人ではなかなか気づきにくい体の異変や病気の兆候に、早く気づくことができる健康管理サービスとなっています。

具体的にはおしっこの量や回数、時間、体重などを計測し、アプリを通じて知らせてくれるという機能が備わっています。なぜこのような機能にしたかというと、猫の尿器系の病気の兆候は、おしっこと体重に表れるために、この二つの要素が猫のヘルスケアを行っていく上で大事なポイントになるからです。おしっこの場合には、量や回数が増えたのか、減ったのか、あるいは回数は多いけど量は少ない、回数は少ないけど量は多いなど、その量と回数の関係が重要です。体重の場合には、増えたのか、減ったのか、その増え方や減り方も急だったのか、時間をかけてだったのかが重要になります。また、そのおしっこの量や回数と体重の関係性も大きなポイントになる場合も。『toletta』は、これらの情報をデータ化し、泌尿器系の病気の兆候を簡単に見つけることができるようになっています。

——体重とおしっこの量を計測するために、どのような仕組みになっているのでしょうか?

日本では、猫がトイレをする空間とおしっこを吸収するシートを敷く空間が別々になっているシステムトイレが一般的だと思います。『toletta』もシステムトイレシステムを導入しているので、おしっこだけが砂と網目を通り抜けてシートに吸い込まれます。そのおしっこを吸い込んだシートがある空間の重さだけを図ることで、効率的におしっこの量や体重を計測できるという仕組みになっています。この仕組みを実現するために、基本的にはおしっこを吸収しない、かたちが崩れないタイプの砂を使っていただきたいと思います。

 

——2匹以上の猫を飼うご家庭でも、『toletta』は利用できるのでしょうか?

猫を飼っている日本のご家庭の平均飼育頭数は、1,8匹。つまり、2匹飼っているご家庭が一般的だそうです。そこで『toletta』では、猫の顔を見分ける顔認識カメラ機能を実装しました。この機能を追加したことで、猫が2匹以上いるご家庭であっても、どの猫がいつ、どのくらいのおしっこをしたのかがきちんと判別できるようになっています。当初は、猫を識別するために首輪をさせるという案もありましたが、首輪をつけることで猫にストレスがかかってしまうかもしれないということで、猫に負担をかけないことを第一に考えた、顔認識機能をつけることになりました。このように、『toletta』は“猫ファースト”な考えが詰まったIoTトイレとなっています。

 

——その他に、“猫ファースト”な考えから実装された『toletta』の特徴的な機能がありましたら教えてください。

先ほどもお話したように、『toletta』はシートを敷く空間の重さだけを図ればいい仕組みになっているので、電子パーツはトイレとは別に外せるような構造になっています。トイレをする空間とシートを敷く空間は、どちらも従来のトイレと同じようにまるごと水洗いでき、綺麗好きな猫にとっては嬉しいポイントになっているはずです。

また、トイレをする空間の容量もこれまでの一般的なトイレと変わらないことや、年老いた猫でも入りやすいように、入り口の高さもこれまでの一般的なトイレと同等に設計しています。これらの設計は、実際にハチたまに所属している猫社員2匹に使ってもらいながら、何度も再設計を繰り返して来ました。猫はこれまでと変わらない生活を送っているだけなのに、いつの間にか健康管理ができている、そんなサービスを目指していきたいと思っています。

 

——猫社員について、もう少し詳しく教えてください。

ハチたまには、保護団体から譲り受けた2匹の猫社員が在籍しています。猫のことをもっと知りたい、猫に関する事業を行う私たちにできることはないか、という思いからこの子たちを我が社に呼ぶことになりました。実は、2匹のうち1匹は猫エイズにかかっています。譲り受ける話が進んでからその可能性があることを知ったんですが、猫エイズに関する知識がなかった私はその話を聞いた時、すごくびっくりしたのを覚えています。しかし、スタッフの山森が言った「この子たちを幸せにできないようじゃ、他の猫たちも幸せになんてできない」という言葉にハッと我に返って。そうして、うーちゃんとちゃまの2匹が猫社員として入社することになりました。

 

——『toletta』のリリース情報や、料金システムについて教えてください。

「世界猫の日」である8月8日から、いよいよ先行販売を行います。実際にお客さまの手元に届くのは、11月頃を予定しています。料金システムについてですが、『toletta』の初期費用は0円。もともとは本体価格を2万5,000円にしようと考えていたんですが、それでは手を出しづらい。そこで私たちは価格を改め、2年間の継続契約を条件に月額使用料500円だけをいただく、という料金モデルに決定しました。それ以外には一切費用はかからないので、当初の予想よりもさらに多くの猫たちに使ってもらえるのではないかと思っています。

 

——初期費用0円、月額使用料500円という圧倒的な低価格の料金システムにしたのは、なぜでしょうか?

私たちハチたまには、IoTトイレというハードウェアを販売したいというよりも、たくさんのデータを集めて猫の健康管理を総合的に行っていきたい、という目的がありました。そのためには、できるだけ多くの猫たちに『toletta』を使ってもらわないとならない。そこで、誰もが導入しやすい低価格なシステムを実現することが必須だったんです。

 

——どのような仕組みで、この料金システムを実現したのでしょうか?

この料金を実現するために、販売経路は直販のみ。広告もほとんど行いません。しかし、代わりに「ニャンバサダー」というアンバサダー制度を導入し、450人という膨大な数の応募の中から9人の猫好きの方たちを採用しました。どの方も、私たちがなぜ『toletta』を作ったのか、どんな思いでサービスを提供していくのかということに共感してくださった猫好きの人ばかり。合計フォロワー数17万人という「ニャンバサダー」のみなさんには、私たちのチームの一員として、今後SNSなどで『toletta』の情報を拡散してもらう予定になっています。

また、ペット保険の大手でありアニコムさんと提携していることも、低価格な料金システムを実現するための仕組みの一つです。保険に加入する膨大な数のお客さまへ向けて、コストをかけずにプロモーションを行えることも、低価格な料金を実現できるポイントの一つになっています。いずれは、私たちが持っている猫を飼っている家のデータと、アニコムさんが持っている猫が病院でどんな治療をして、いくらかかったのかというデータを組み合わせることで、猫の健康に関する共同研究を行っていければと考えています。

——最後に、ハチたまの今後のビジョンを教えてください。

大きく分けて二つあります。一つ目は、海外進出です。特に日本の約7倍、7,000万匹という飼い猫がいるアメリカに本気で進出したいと考えています。というのも、猫は世界中にいて、どの地域でも同じ課題を抱えています。私たちには、言葉の壁はありません。なので、グローバルな市場を狙っていきたい。アメリカから作ったものを日本に輸入するばかりではなく、日本からアメリカのテクノロジー市場に進出していけたらと思っています。

二つ目は、『toletta』を通じて集めたデータと、アニコムさんの持つデータ、提携している動物病院のカルテのデータなどを組み合わせて、独自のAIを作ることです。この取り組みによって、ペットの年齢で決める保険の加入料金システムが、健康状態によって決めるシステムに変えることができるかもしれませんし、それぞれの猫に最適なごはんを教えてあげられるシステムができるかもしれません。このようにビッグデータを活用していって、これまでは見えてこなかった猫の健康に関する発見をし、世界中の猫と飼い主が幸せになるための方法を探っていけたらと思っています。そのためには、まだまだ多くのチームメンバーが必要です。ぜひ、猫を幸せにしたいという気持ちをお持ちで、私たちの思いに共感してくださる方は、ハチたまの一員になっていただけたらと思っています。

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