子供向けプログラミング教育にも最適な段ボール製ロボット『embot』── 額田一利さん、脇阪洋平さん、山﨑健生さんインタビュー

■プロフィール(左から)
企画、デザイン 額田一利さん
企画、プログラミング 脇阪洋平さん
企画、プログラミング 山﨑健生さん
embot

会社の勉強会をきっかけにチームが誕生!!

まずはみなさんのプロフィールと経歴を教えていただけますか?

■額田(ぬかだ)さん

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『embot』は、私と、脇阪、山﨑の3人で開発しています。元々、3人とも同じ会社の別々の部署に所属していたのですが、脇阪は転職し別の会社に現在勤めています。今は『embot』の開発のために3人で定期的に集まっている状況ですが、今も昔もメンバーの立ち位置はそれほど変わらないですね。

『embot』のプロジェクトを始める前は、僕は会社ではエネルギーマネジメントシステムといった環境系の研究をしており、学会、論文、特許といったものを扱う業務を主に担当していました。

会社が比較的大きい会社なので、当たり前の話なんですが、業務がすべてお金につながらないといけないということに若干つまらなさを感じていました。研究所でさえそういう風潮があり、なのでもっと自由にビジネスやサービスを語り合う機会がほしかったというのがありました。

それと、僕自身はHacker的な能力がまったくないので、そういう技術に特化した人と一緒に何かをやってみたいという気持ちが強くあり、そこから僕自身の底上げにも何かつながらないかなと考えていました。

そこで同じ社内にいた脇阪君、山﨑君に声をかけたといいますか、彼らに僕自身の技術力を引っ張り上げてほしいなぁという気持ちもありながら、社内勉強会として3人で集まったのが、このプロジェクトのきっかけですね。

■脇阪さん

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私は物作りが大好きなので、高専でずっとプログラミングの勉強をしてきました。そこでプログラミングやロボットのコンテストに出たりしていました。そこから額田と同じ会社に入社するのですが、私は研究所ではなく、開発部で音声認識アプリケーションの開発をずっと担当していました。そこで市場に商品を出したり、不具合の改修をしたり、新しい開発手法などを勉強しながら業務をこなしていました。

マネージメント業務が増えていく中で、いずれ研究開発に戻りたいなぁと思っていたので、日々プログラミングをするように努めていたのですが、1人でやっていると行き詰まってくるので、このメンバーなどで社内勉強会を始めたんです。
ちょうど1年ぐらい続けた頃に「3人で何か作ってコンテストに出してみない?」と話を持ちかけたのがきっかけとなり、「Mashup Awards」へのエントリーを目標として、サービスを1から作って全部自分たちでやってみたかったという思いがあり、さらに技術力を磨きたいという思いもあって取り組んだのが最初ですね。

実際には、そのあと僕はもっと技術力を向上させるために転職することになったんですが、ちょうどそのタイミングでTECH LAB PAAKの会員になることが決まり、会社が変わってもこのメンバーで『embot』の開発が続けられる環境を持つことができて、現在に至ります。

■山﨑さん

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私は額田さんと同じ会社で通信系の研究をしています。元々はプログラミングが趣味で、ハッカソン等にも個人で参加していました。そんな中、社内で勉強会をやろうという脇阪さんの企画がきっかけで、チームに参加することになりました。

最初は作ったプロダクトを会社の役員に見せるつもりだった

そこから『embot』は、どのように生まれたのでしょうか?

額田:最初は3人で何かを作って、俺らみたいな会社のペーペーがこんな面白い物を作ったぞ!というのを役員に見せに行こうぜって言っていましたね。それって実際にはどういうマイルストーンで物を作っていったらいいかという話になって、ま、いきなりは無理だねっていうことに気づき(笑)、Mashup Awardsへのエントリーをまずはマイルストーンにしようということが決まりました。

脇阪:そこから逆算して、小さいマイルストーンをいくつか置いて、Mashup Awardsに向けて何を作り、どう進めていけばいいかを3人で考え始めました。

実は最初は『embot』を作ろうという話ではなく、とにかく額田君の底上げをしよう、額田君をプログラムが書ける人にしようという話で盛り上がっていました。そこでソフトウェアだけじゃ面白くないから、何かハードウェアと組み合わせたいという話になって、直感的にロボットがいいねということで話がまとまりました。

額田:ソフトウェアで「Hello, world!」と出てくるより、ハードウェアが動き出したほうがカッコいいよねということになり、動くロボットを作るためのパーツをAmazonで買ったりしていくうちに、梱包用の段ボールからヒントを得て、ロボットの基本的な素材を段ボールにしよう、という話になっていきました(笑)。元々プロダクトをどれだけ安く提供できるかということも話し合っていたので、段ボールが一番しっくりきましたね。

すぐに『embot』を作ろうという話になったわけですね。

額田:いえ、ロボットにたどり着く前に、地方創生のアプリを作ろうとか、地域別の食べログみたいなものを作ろうみたいなアイデアも出ました(笑)。アイデア出しのために熱海で合宿して、どんなものが面白いんだろう? と、話をしたこともありました。

そこから感情を伝えるウィジェットのようなものを作ろうというアイデアが出てきて、一目でその人の感情がわかるソフトウェアを作ろうというアイデアが出たあとに、「それ、ロボットでよくない?」ってことに気づき、『embot』につながりました(笑)。

そもそもウィジェットで作ってニコちゃんマークみたいなものを表示しても、みんな見ないし、LINEやメールもどんどん未読がたまって、結局最終的には見ないよねっていう結論になったんです。代わりにロボットにして机に置いておけばみんな見るでしょ、っていう話でまとまりました。

そこからプログラミング教育へは、どのようにつながっていったのでしょうか?

額田:まずは感情を表現できるロボットが出来上がってから、このあとこれで何をしようか? と考えて出てきた様々なアイデアのうち、ひとつ選んでやってみようと言って進めたのが、プログラミング教育の教材です。素材が段ボールであるというのも幸いし、簡単に作れるので、教材にはもってこいでした。

脇阪:ちなみに、設計段階で、ロボットをいろいろなモノと連携できるようにAPIの自由度を上げてあるんですね。別々の場所からロボットにアクセスできるようにその可能性を上げたので、アイデア次第で後からいろいろなことができるようになっています。

最初からAPIを公開する仕様になっていたということですか?

脇阪:はい。今回、LINEスタンプと連携できるようになっていますが、サードパーティに公開して別のモノと連携させたり、オープンAPIで公開してもいいよね、というような話もしていました。それも含めて、今後のアイデア次第ですね。

『embot』は、何にでもつながるプラットフォームにしたい!

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実際に『embot』は、これからどんな方向に進んでいくのでしょうか?

額田:本筋は、感情表現を誰かに届けることができるロボットから、『embot』を介していろんな通知ができるプラットフォームにしたいと考えています。プラットフォームとしての『embot』をベースにしながら、要望に応じて機能を拡張していき、いろいろなモノとつなげていきたいと考えています。

例えば、テレビ番組と連携させるために、テレビと『embot』をつなげる機能拡張もしています。『embot』は、機能を拡張させながら、様々な方向にアウトプットを増やしていくというのが将来に向けてのプロジェクトになると思います。

そのため、我々自身で何かに特化させようと考えているわけではなく、あくまでも『embot』をプラットフォームとして提供していきながら、みなさんに使ってもらえるように機能をどんどん拡張していきたいという将来像を描いています。

また直面している問題として、学校でのプログラミング教育には、生徒側だけではなく、先生側にも難しさがあり、どうやってプログラミングを教えたらいいのか? という悩みを教育現場でよく聞くので、先生側から見ても『embot』を使ってみたいと思ってもらえるようなものにしていきたいですね。極論は、僕らが介入しなくても、先生が『embot』を見ただけでプログラミングを教えることができるような教材にしたいと思っています。

教材という意味では、実は『embot』は簡単に壊せるということもポイントが高いと思います。昔のパソコンのように、作るだけではなく、分解して壊すことも勉強になるというか、物事を学ぶのに壊すということも重要だと思います。

そこが段ボールのロボットにつながったということでしょうか?

額田:それは結果的には後からつながりました(笑)。

山﨑:実は3Dプリンタで作ったバージョンもありますし、アクリル板のロボットもあったんです。僕らもいろんなパターンを作ってみました。そんな中で「あ、これいい!!」と思えたのが段ボール製のロボットでした。ユーザー側から見てもインパクトがありますし、自由度が高そうに見えるので、自分のロボットが作れるという気持ちにつながるのでは? と、この素材を選びました。ロボットなのに段ボールという、そのギャップも面白いんじゃないかなと思ったんですね。

プロジェクトを完成させるにあたり苦労したことはありますか?

脇阪:Mashup Awardsをゴールにしていたわけですが、実際にエントリーが完了したのは締め切りの前日でした。最後の最後、頑張って徹夜して間に合わせました(笑)。『embot』の開発が難しいとかそういうことではなく、単純に会社の業務がみんな忙しくて、計画が甘かったというか、スケジューリングの問題でしたね。

額田:最後は、エントリーを進めつつ、プロジェクトの開発もしながら、『embot』のホームページも作るなど、とにかくすべての作業を並行して行っていました。

結果、エントリーも、『embot』の開発も、全部ギリギリで間に合ったんですが、それからはもっと計画的に、メンバーで会える時間も限られている中で、定期的により綿密に打ち合わせをするようになって、様々なことを意識共有するようになりました。

脇阪:僕が転職したこともあり、立場や視点が変わって、メンバーと会えるチャンスが貴重になり、お互いに言いたいことを言い合って、みんな時間を計画的に取り回せるようになりましたね。苦労をしたというほどのことではありませんが、今はそれが功を奏してチーム力も計画性の精度も上がったと思います(笑)。あとは、TECH LAB PAAKのメンバーになれたことで、コンスタントに打ち合わせをする場所ができて助かりましたね。

ちょうど次にTECH LAB PAAKについてのご感想を伺おうと思っていました(笑)。

脇阪:TECH LAB PAAKをハブとしてメンバーに会えるという環境が、すごく効率が上がりました。ここに来れば、ネットワーク環境もあるし、ディスプレイも会議室もあるので、打ち合わせをするのに最適で、より計画性が高まりました。

さらに、TECH LAB PAAKには成果発表会があるんですが、そこをいったん最終ゴールに定めることでプロジェクトをまとめるスケジュールの目安にもなりました。

ちなみにプロジェクトは、それぞれどんな役割で進めたのでしょうか?

額田:普段勤めている会社の、職種別のプロジェクトの進め方が嫌いだったので、まずはみんなで考えて、アイデアを出し合ってから何をするかを決め、実務の段階でそれぞれが得意なところを担当するという方法でプロジェクトを進めてきました。なので、僕(額田さん)は技術力がないので、2人に技術的なことをお願いしたら、僕が営業をしたり、ロボットのデザインを考えたりと、役割分担で進めてきましたね。

また、これは2人には伝えていないんですが、僕はチームビルディングでものを作るときに、彼らの才能をつぶすような稼働をかけないようにするということを意識してきましたね。彼らが自由にプログラミングできるように、彼らじゃなくてもできることは全部僕がやっています。その方がチームとしての効率もいいので、そういう役割でプロジェクトを進めてきました。みんなで作るというのが原動力になっているので、開発スピードもめちゃくちゃ早かったですね。

最後にエンドユーザーに向けて一言お願いします。

脇阪:まずはプログラミング教育にフォーカスして『embot』を作っているので、これからプログラミングを勉強していく子供たちにとって、これがきっかけや希望になるようなソリューションにしていきたいと思います。あとはこれを世の中に浸透させて、使っている人が『embot』でうまく感情が伝えられるような楽しい世界にしていきたいなと思っています。

額田:そして、やはりプログラミングを教える先生側にとって、気軽に子供たちにプログラミングを教えられる教材にしていきたいと思いますので、よろしくお願いします。

ありがとうございます。

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