サーファーが波を求めて旅するように、いい道を求めてランナーが旅をする時代――大森英一郎さんインタビュー

代表取締役 大森英一郎
株式会社ラントリップ

地域にとっては「道」は資源となる

まず大森英一郎さんのプロフィールを教えていただけますか?

ラントリップを立ち上げる前は、神奈川県横須賀市で観光関係の事業をしていました。そこで、東京湾唯一の無人島である猿島の管理や船の運航などを行うなど、行政と一緒に地域活性ということをやっていました。それ以前、リクルートグループで働いていたんですけど、転職してかなり時間に余裕ができたので、学生時代に箱根駅伝に出たという経験から、それを活かしたNPOを設立してランナー向けのレッスンやイベントなどを行っていました。

現役時代

現在のプロダクトを開発するに至った経緯を教えてください。

そんな経験からランナーの課題感だったり、観光の課題感などがずっと見えていて、何かそれらをつなげるというか解決できたらいいなと思ったのがきっかけです。2年ぐらいもやもやっとしていたんですけど、思いついたのが、ランナーが走りたくなるような魅力的な道を簡単に探すことができるラントリップというサービスです。

実は私はランナー現役のときは走ることを好きになれずにいました。当然すごく辛くて、箱根駅伝に出たくて頑張れてたんですけど、市民ランナーの方にレッスンをし始めるようになって、そこで初めて走るって楽しいってことに気づけました。それを市民ランナーの方から教えてもらったような感覚なんですが、一方で距離やタイムといったような数字のしがらみに縛られて苦しんでいるランナーさんも多く見かけて、それが現役当時の自分に重なったというか、ランニングってもっと自由に楽しめるし、生涯のスポーツとして楽しんで走れたらいいんじゃないかなーというふうに思えるようになって、それを自分の立場なら提案できるのかなと思いまして、ラントリップという発想に至りました。

ちなみに「ラントリップ」という言葉は、サーファーがいい波を求めて旅をするサーフトリップという言葉から来ていて、いい道を求めて旅をするランナーを増やしたいという思いで、まぁライフスタイルの提案なんですが、それを多くの人に伝えたくて始めました。

横須賀市馬堀海岸(大森の地元の道)

思いついて、すぐに起業されたのでしょうか?

いえ、最初はNPOをやりつつ、サラリーマンも続けながら、2014年の春ぐらいからですかね、週末プロジェクトとしてプロダクトをスタートさせました。

ラントリップ自身は、スポーツツーリズムというジャンルになると思うんですが、私はスポーツツーリズムについては見識があると思っていたんですが、これを普及させようとなったときに、ビジネスモデルとしてITを使うというところにたどり着いたんですが、エンジニアとかそっちの見識がある人間がいなかったので、まずはそこの仲間を集めるというところから始めましたね。

で、東京都が主催していたビジネスプランのコンテストが2014年の7月にあったんですね。それにエントリーをしたところ、450件のプランの中から採択10件に選んでいただいて、多くの方々の前でプレゼンテーションをする機会をいただけて、様々な支援をしていただけるようになって、ここまでお膳立てしていただいたんであれば、これをビジネスとしてやらなければたぶん生涯後悔するだろうなと思って、起業を決意しました。

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ご本人自身がITに興味があったわけじゃないところが面白いですね。

なぜラントリップのような気持ちが芽生えたかというと、特に日本の方というのは、中学時代の持久走のイメージが強くて、ランニングに対してすごくネガティブな印象があるんですよね。もっというとペナルティとして走らされていたという意見が結構あるので、ネガティブな気持ちが本当に強いんですけど、そこを変えられたらいいなという思いで始めました。ラントリップを通じて、今、走っていない人もランニングが始められるようになったらいいなぁと思っています。

それとラントリップが普及すれば、地域にとっては「道」が資源になると思っているので、イベントに依存しない集客ができるんですね。ランニングでの集客というと、マラソン大会のようなイベントが有名ですが、マラソン大会で1日で1万人に来るイベントを作るってすごく大変だし、意外と地域側も疲弊するんです。でも、道を紹介するだけで、例えばその道に仮に1日10人の人が訪れるようになったとすれば、1年間で3,650人が来ます。そんな道が3本あったら、それで年間1万人を超えるわけで、しかもまったくお金がかからないですよね。
なのでこれは地域のためにもなるだろうなと思いましたし、一方でランナー対してはさっきお伝えした通り、数字に依存しない新しいランニングの楽しみ方なので、よりランニングを楽しめる人、というか当時楽しめなかった自分にとっても魅力的なランニングを伝えられるんじゃないかと思ったんですよね。

観光とランニングを見てきたという人材は、日本国内にもたぶん多くないと思うので、これは自分にしかできないことかなというふうに思っています。

写真2

「道」が資源になるという発想が斬新ですね。

最初は、雑誌を作ったほうがいいのかなとか、旅人みたいに自分でまわってブログを書いていたほうがいいのかなととか、いろいろ思っていたんですけど、その土地のランナーが知っている情報に価値があると思っているので、やっぱりCGMという方法でユーザーが投稿したほうが意味があるなと思って、それでITにつながったというのが経緯ですよね。

なぜ、雑誌という結論にはならなかったんでしょうか?

まずグローバルでやりたいというのがありましたね。ラントリップという言葉自体も、そもそもグローバルで最初からやりたかったので、そういう言葉にしました。
実は日本では「旅ラン」という言葉がランナーの中ではメジャーなんですけど、旅ランって日本語なのでグローバルでは使えない言葉なんですね。なのでラントリップにしました。

で、グローバルで広げる以上は、インターネットかなと思いますし、さっきのやっぱり地元の人が知っている情報にこそ価値があるということと、かつ情報の鮮度というものが大事だと思うので、その両方をカバーできるのは、恐らく紙ではなくてインターネットだと思うんですよね。いつでもどこでも見られるし、常に更新ができることが大事だと思います。

TECH LAB PAAKには同じフェイズの人たちがいる

写真3

ではTECH LAB PAAKに参加することになったいきさつについて教えてください。

最初にここを知ったのは、スタートアップ経営者のコネクションの情報でこんなところがあるよー、募集しているよっていうのを聞いたのがきっかけで、エントリーしました。

エントリーした理由に、リクルートがやっているっていうのがあって、元々自分はリクルートグループで営業をやっていたので、そんな縁を感じるのと、やっぱり会社を立ち上げたばかりの頃って、本当に他の方との情報交換ってすごい価値があるし、業種は違っていても同じ志を持つ人たちの中に自分を置くのはすごい大事なことだと思って、ずっとこういう場所を探していましたね。

やっぱりフェイズが同じ人たちって、直接的な課題が違っていても、なんとなく近しい悩みがあって、それで誰々紹介できるよとか、こういうふうに僕は越えたよみたいな情報交換ができるので、それがやっぱり強いですね。

逆にビジネスが競合してないがゆえに、すべて出せるというか、見せられるっていう感じですね。これを相互メンタリングって呼んでいるですけど、上と下ではなく、横の関係で互いにアドバイスをしあうということをやっていて、すごく価値を感じています。

ツールのいきつく先はコミュニケーションツール

これから起こしていきたいイノベーションがございましたら教えてください。

ラントリップの延長線上で考えると、次のフェイズとしては、ローカルランナーとそこを訪れるランナーのマッチングをしていきたいですね。

以前、白川郷を訪れたときに、その土地のランナーを紹介してもらって一緒に走ったことがあるんですけど、ものすごい観光客で溢れているいわゆる白川郷の合掌造りの村々の中ではなく、ちょっとはずれた道をトレイルランニングで走って、山の上から下を見たときに、ここはランナーにしか見えない景色なんですよ、みたいなことをちょっと自慢げにいわれて、その体験がすごくよくて、もう自分の中でそこが忘れられない土地になってますし、そう思える土地が世界中に増えたらすごい面白いなぁと思うので、ローカルランナーとのマッチングは、やっていきたいですね。

岐阜白川郷

それは、ツールとしてはコミュニティみたいなものになるんですか?

そうですね。今、ラントリップは、検索をして道を見つけるというランニング前のニーズなんですけど、ランニング後のニーズとして、コミュニーションツールとしても使われるようになっていきたいなと思っています。

あ、あとすごい抽象的ですけど、サーファーってサーフィンをやらない人からしてもカッコいいって思われるんですけど、ランナーって走らない人からすると変態っていわれるんですよね、ドMみたいな(笑)。それがあるんで、そこを変えたいというか、趣味はラントリップですっていったときにカッコいいと思われるような価値観に変えたいっていうのがあるんですよね(笑)。

最後に、このプロダクトに興味を持った方にメッセージをお願いします。

日本のランナーさんってすごい真面目で、記録とか、順位とか、走るコースとか、すごくこだわりが強いんですが、もっと自由に、楽にランニングを楽しんで欲しいと思っています。途中で立ち止まってもいいし、寄り道してもいいし、写真を撮ったりだとか、コーヒーを飲んでもいいと思います。
ラントリップ上にも一応ルートのデータがあるんですけど、もちろんその通りに走らなくてもいいです。日々の生活の中で自由に気楽に楽しんで欲しいし、生涯ランニングを楽しむためのツールとしてラントリップを使って欲しいですね。
ラントリップ:https://runtrip.jp

ありがとうございます。

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