PAAK、VRコース会員プロジェクトを一般公開するデモ体験会、ライトニングトーク開催-VR Course Exhibition Dayレポート

2016.12.20

12月1日に、TECH LAB PAAK(以下、PAAK)VRコース会員のプロダクトを一挙に公開する『VR Course Exhibition Day』が開催されました。

VRコミュニティの活性化を目的に、新たに開設されたPAAKの「VRコース」もすでに2期生が入居し、現在17チームのVRスタートアップチームが活動中です。この日はそのうちの13チームが参加し、会場に集まった企業やメディアや、VRに興味がある一般の方向けに、実際に開発中のプロジェクトに触れることができるデモ体験会、コンテンツ内容を紹介するライトニングトークが行われました。

FullSizeRender

第一部の「VRコース会員デモ体験会」では、PAAK内にて、参加チームによるプロダクトのデモやポスター発表が行われ、実際に体験することができるプロダクトの出展が多数あり、参加者はこぞってVR体験を楽しみました。

1482125023

第二部のライトニングトークでは、VRコース会員13チームそれぞれ持ち時間5分で、プロダクトの紹介と現況を報告。VRのファッションから脳科学まで、幅広いプロダクトが紹介されました。

1482125083

 ライトニングトーク 発表チーム

1. 株式会社Psychic VR Lab 山口征浩氏

2. Extension 澤村隆寛氏

3. 株式会社team S

4. QOOQ inc. 上田大豊氏

5. HoloEyes株式会社 谷口直嗣氏

6. AMATELUS Inc. 松田光秀氏

7. 東京工業大学 奥村圭祐氏

8. Paneo株式会社 吉田一星氏

9. Women Who Code Tokyo 佐藤紘美氏

10. 株式会社VRize 正田英之氏

11. PENGUINS 吉岡孝展氏

12. サークルハイドレンジャー 渡部晴人氏

13. Macrospace Inc. 中ノ瀬翔氏

 

1.株式会社Psychic VR Lab 山口征浩氏

1482125128

VR上で展開する、ファッションに特化したショッピングサービス『STYLY』を作るPsychic VR Lab。STYLYでは、「ファッションの魔法を加速させる」をテーマに、ファッションブランドの世界観をVR上で表現し、より楽しいショッピングの実現を目指す。VRによるショッピングは、ネットショッピングの代わりでもなく、また店頭でのショッピングの代わりでもないものでなければならない、そのうちの答えのひとつが「ブランドの世界観」を伝えることだという。STYLYは、そんなブランドストーリーをVRで伝えることができるプラットフォームだ。また、VRの空間自体をファッションとしてとらえ、将来はVR空間を身にまとう時代がくると考えているとのこと。ちなみに現在は、HTC Viveにてプロダクトを開発中だが、今後は誰でも手軽にVRショッピングが楽しめるようにスマートフォンによるVRも視野に入れて開発中とのこと。

2. Extension 澤村隆寛氏

1482125155

TECH LAB PAAKに応募した際のアイデアは、『Skype+VR』のようなシステムを作って、背景に360°動画で撮影された世界中の風景を流し、それを使ってみんなで世界一周を体験しようというものだったが、つい最近Googleが「Google Earth VR」という革命的なアプリを発表し、コンセプトが澤村氏の考えていたものと似ていたことから、急遽、ピボットを検討中だという。まだ今後について詳細は未定だが、澤村氏がこれまでに実験・開発をしてきた3Dモデル作成、リアルタイム360度動画通信、複数人でのコミュニケーションが可能なマルチプレイヤー通信といった要素を含んだ新しいサービスを、これから3月のPAAK卒業まで頑張って構築していきたいとのこと。ポイントはリアルタイム性であり、そこが澤村氏の得意なジャンルでもあると加えた。

3. 株式会社team S

1482125184

team Sが目指すプロダクトは、VR図書館、そしてVR書店という、電子書籍の未来を見据えた本、書店に関するアイデアだ。電子書籍やネットショッピングが主体となったことで、日本の三分の一の市町村に書店がない今、かつて町の中心に本屋さんがあった時代のように、子供たちが自由に本を手に取って見るという経験をしてほしいという思いでこのプロダクトを作ったのだそう。team Sは、まずは2017年春に地方数カ所の自治体と一緒にVR図書館のプロトタイプ検証を行い、本を手に取って見ることができるVR上の図書館の全国展開を目指すという。そして2020年、VRのハードウェアの普及に合わせて、町の書店の魅力とネットの便利さを兼ね備えた、VRならではの書店サービスを創出していく計画だ。

4. QOOQ inc. 上田大豊氏

最大2人の開発者でできそうなプロジェクトのみを推し進めているというQOOQ inc.は、いくつかのプロダクトを開発している中で、今一番力を入れているのが『Yesterscape』というARカメラとのこと。Yesterscapeは、すでにApp storeで公開中で、撮影した写真がそのまま時空間に残るというカメラだ。ふたたび撮影の地を訪れると、月日がたっても過去に撮った写真が思い出のようにその場に残っているというもの。また他のユーザーと写真を共有することができるため、場所に紐付いた人々の写真を、時空を超えて眺めることができる、タイムマシンのような役目も果たすことができる。VRやARが作り出す空間は、人間の人間的な部分に大きく関わることができると話す上田氏は、そこをアプリ化することですごく面白い物ができると意気込む。今後は、YesterscapeのAndroid版を2017年春までに、また2018年頃に発売されるARメガネ向けアプリとしても視野に入れて開発していきたいとのこと。

※写真不可のため未撮影。

5. HoloEyes株式会社 谷口直嗣氏

1482125209

エンジニアの谷口氏と外科医の杉本氏2人で設立したHoloEyes株式会社は、医療の世界でVR情報革命をおこすべく、3次元の人体情報をそのままVRで共有するシステムを開発中だ。個人でも購入可能となったVRヘッドセットと3Dエンジンの組み合わせで、巷では情報の提供が情報の体験に変わるという新たな情報革命が起きているが、医療分野でも3Dデジタルデータによるコミュニケーションで情報革命が起こるときを迎えるはず。と谷口氏はいう。HoloEyesではHTC Viveを使ってビューワーを制作中だが、そのデモでは3Dで奥行き感をリアルに実感でき、人体内部まで頭を突っ込むようにして臓器の細部まで確認することができる。また医療機関にViveとパソコンを複数台導入することが難しいため、Viveとスマートフォンも連動させて、主治医がVive、その他はスマホのビューワーで内容を確認するといったことも実現している。このデモを用いて、VRによる手術カンファレンスなども行っているそうだ。なお今後は、VRによる手術のナビゲーションや、人体のあらゆるデータを3D化し、目的の人体情報をいつでも取得できるVRアーカイブを構築していきたいとのこと。

6. AMATELUS Inc. 松田光秀氏

AMATELUS Inc.が現在開発中のプロダクトは、『Swipe Video』。

いろんな視点から映像が見たいというニーズから生まれたSwipe Video。美しいフォームをいろんな視点から見たい、次のトレンドファッションをいろんな角度から見たい、という欲求を実現させたもの。そう聞くと360度動画とどう違うのか? という疑問がわくが、360度動画は映像をスワイプすることで視点が変わり、見ている人を中心に視点が変わるため、それまで見ていた人物や被写体が見えなくなるが、Swipe Videoは映像をスワイプすることで被写体を中心に視点が変わる、常に目的の被写体を見るというのが大きく違うところ。360度動画は風景を撮るものだが、Swipe Videoはその逆で見たい物を360度視点で撮る、とのこと。特徴は、360度カメラではなく、普通のカメラを複数台並べて撮影している、いわゆるバレットタイム撮影で実現させている点だ。また、Webだけでも再生ができ、編集ツールも従来のもので可能だ。

※写真不可のため未撮影。

7. 東京工業大学 奥村圭祐氏

1482125233

研究者志望の奥村圭祐氏は、VR=『バーチャルリアリティ』について普段から考察しているという、東京工業大学の学生。奥村氏は、自己身体認知とVRを重ね合わせる研究を行っている。自己身体認知とは、自分の脳が自分の体のことをどう認識しているかということ。それとVRを組み合わせることで、いろいろなことが実現できるという。たとえば被験者にVRゴーグルを付け回転椅子に座らせ、白い棒が左から右に流れていく映像を見せ、左耳にだけ踏切の音を聞かせて、回転椅子を右から左に少しだけ回転させると、被験者に永遠に回っているような感覚が生まれるとのこと。そんな研究を日々行っているそうだ。また、将来VRによって感覚の共有ができるであろうと考えられているが、人と人とが直接つながるネットワークは、今後どんな社会を形成していくのか、そこを自らも一緒に考えていきたいと語った。

8. Paneo株式会社 吉田一星氏

1482125255

Paneoは、これまでのオンラインチャットシステムでの会話で感じていた「話が伝わりにくい」という状況を、VRで解決するプロダクト『Embody Me』を開発中だ。簡単にいうとアバターを使ったシステムで、実際に会ってコミュニケーションをする必要性がなくなる世界をVRで実現する。現状、人間を3Dモデル化してアバターを作成するには時間と労力がかかるが、Embody Meの特徴は、1枚の顔写真を撮るだけで簡単に自分に似たアバターが生成できること。また髪の毛や洋服等、個性溢れるアバターも容易に作成できる点にある。すでにデモでは、コストと時間をかけずに、即座にアバターを生成し、かつVR上で自由に歩き回ったり、他のアバターとコミュニケーションをはかることが可能だ。またEmbody Meは、手の動きを読み取り体の動きを推定したり、顔の表情を読み取ってアバターに反映させることもできる。アバター同士で積み木を積み上げたり、あるいは投げ合う、邪魔し合う等、VR内に存在するオブジェクトを共有することもできる。すでに家に居ながらにして、友人のアバターと会うという環境ができつつあるのだ。

9. Women Who Code Tokyo 佐藤紘美氏

1482125273

Woman who code Tokyoは、プログラミングの勉強会やキャリア形成についてなどのイベントを開催し、テック業界における女性をさまざまな視点から支援しているNPO団体。その代表を務める佐藤紘美氏はO・RI・GA・MIというチームで、「ゆるっとふわっとVRで楽しいことしたい」をコンセプトに活動している。Takeshi Osoekawa氏とともに作るプロダクトは、「楽しい」、「日本らしさ」がテーマ。そこで今回思いついたアイデアが、折り紙。VR上で折った折り紙が動き出したら楽しいなぁという発想から、実際に作り始めたという。デモでは、完成した折り鶴が自由に飛び立つムービーを披露。一羽の鶴のまわりを、仲間の鶴が舞うシーンは静止画だが、実際には360度見渡せるとのこと。またプロダクトでは、折り紙を折った手順が保存されるため、作品から作り方の動画を生成することができるほか、折った作品に色を塗ることができるため紙の模様を逆算することができるなどの用途があるとのこと。

10. 株式会社VRize 正田英之氏

1482125292

今後あらゆる産業がVR化していき、VRが産業を変えていくと正田氏は考えているが、その一方で、マネタイズの難しさという課題があるという。そこでVRizeでは、VRアプリの収益化を支援する日本初となるVR内動画広告ネットワーク『VRize Ad』を開発、リリース。VR広告は、360度動画×3Dとデジタル広告市場、最もリッチな広告体験となるため、ブランド系の広告と相性がいいとのこと。またテレビCM等は、昨今ユーザーはCMの際にスマートフォンをいじったりして見逃されるケースが増えているが、VR広告は常にVRヘッドセットを付けているため、必ず見られる広告になるという。また新サービスとして「VRize Video」を発表。VRize Videoは高機能・マルチデバイス対応のVR動画アプリを、洗練されたUI/UXで制作するCMSサービスだ。VRize Adでマネタイズできる環境を作り、広告による収益化ソリューションを提供、VRize VideoではVRアプリの開発まで総合的な支援をし、VR市場のエコシステム構築に貢献していきたいとのこと。

11. PENGUINS 吉岡孝展氏

1482125313

チームPENGUINSは2016年に結成された、VRコンテンツとVR+デバイスを組み合わせたコンテンツ制作を主に行っているエンジニア4名のグループ。基本的には、各個人が自由にコンテンツを制作し、それを持ちよって意見交換をするなどの活動をしている。今回は『やまたのおろち』というVRゲームを紹介。ゲーム内容は、ヘッドマウンドディスプレイを使用し、リアルな感覚で武器を操作しやまたのおろちを倒す、さらにそのあとには、モーションキャプチャーデバイスを着用しラスボス的な鬼を演じているユーザーと、ローカル対戦ができるといったもの。ラスボスを演じるユーザーは、ハコスコを改造したVRゴーグルとスマートフォンで巨大な鬼の視点から目の前の小さな人間を踏みつぶそうと動き回り、もう一方はその鬼を剣で倒すために戦うという内容だ。また現在、モーションキャプチャー2台、HTC Vive最大8台を使用する、1人の巨大モンスターと3人のプレイヤーがチームで協力し合い、同じ構成の相手チームと戦う対戦バトル『大怪獣バトル(仮称)』を制作中。またその他、VRと様々なデバイスを組み合わせたコンテンツを開発予定とのこと。

12. サークルハイドレンジャー 渡部晴人氏

1482125341

渡部晴人氏が個人で活動をするサークルハイドレンジャーは、ドラゴンに乗って空を飛びながら敵を撃つシューティングゲーム『The Gunner of Dragoon』を制作。VRの黎明期である現在、VRならではの面白いゲームが非常に少ないという渡部氏。そこでこのプロジェクトが目指すのは、「VR時代」のゲーム。今回デモも展示されたゲームThe Gunner of Dragoonは、ゲーム自身のクオリティが高いばかりか、ドラゴンに乗っている臨場感を出すためにロデオマシンなどの乗馬フィットネス機器に乗り、サーキュレーターの風を浴びながら戦うという演出も秀逸。しかもロデオマシンでかなり揺らされるが、全く酔わない仕組みもしっかりと研究されている。今後の展開として、ゲームセンターでのアトラクションを始め、家庭用VR機器、スマートフォンによるVRなどのゲーム開発まで視野に入れているあたりが楽しみだ。

13. Macrospace Inc. 中ノ瀬翔氏

1482125370

Macrospace Inc.のプロダクトは、ロボットとVRの技術を組み合わせたもの。目の前のロボットが、VRヘッドマウントディスプレイを付けた人の動きと完全に同期する、VRによる遠隔操作が可能なロボットだ。この日用意されたデモでもすでに、腕の動きはもちろん、指の動きまで同期させることができ、かつVRでの自分の目線とロボットのカメラまで完全に一致させている。ロボットの移動については、ヘッドマウントディスプレイ内のパネルにて操作する。これでほぼ完成に近いように思えるが、中ノ瀬氏が目指すのは人型ロボットだという。また2020年に米国にて開催が決定している、賞金総額25億円という遠隔操作できるロボットの国際コンテスト入賞を目指して、さらに技術に磨きをかけていきたいという中ノ瀬氏。これを1人ですべて開発しているというから、驚きだ。

以上で、すべてのチームのプロダクト紹介が終了。会は、そのまま第三部懇親会へ。

なお今回は、第一部、第二部に参加した人が、最も「応援したいチーム」を選び、投票フォームよりネット投票を行い、デモ体験会、ライトニングトークそれぞれのプロダクトの中からオーディエンス賞を決定。集計の結果、各賞は以下のプロダクトに決定し、最後に表彰式を行いました。

1482125460

 表彰式

デモ体験会の部 オーディエンス賞
Paneo株式会社
「Embody Me」

2016-12-01 20.57.49_sum

受賞コメント:本当にありがとうございます。うれしいです。来年、1月、もしくは2月ぐらいまでにはリリースできると思いますので、頑張っていきたいと思います。ぜひダウンロード等、応援をよろしくお願いします。


デモ体験会の部 オーディエンス賞
株式会社Psychic VR Lab
『STYLY』

2016-12-01 20.59.29_sum

受賞コメント:栄誉ある賞をいただきました。ありがとうございます。これを励みに、将来、TECH LAB PAAKに恩返しができるよう、さらに頑張っていきたいと思います。


ライトニングトークの部 オーディエンス賞
Macrospace Inc.
VRによる遠隔操作ロボット

2016-12-01 21.01.44_sum

受賞コメント:今個人でやっていますが、来年からしっかりと事業として、プロジェクトとしてやっていこうと思っています。ぜひ天才エンジニアの方、一緒にロボットを作りましょう!! もし興味がありましたら、ぜひFacebook等で御連絡ください。よろしくお願いします!!

表彰式のあと、Media Technology Lab.室長 麻生要一より閉会の挨拶が行われました。

IMG_4017_sum

「受賞されたみなさん、おめでとうございます。簡単な総評なんですが、VRコースのみなさんのプロジェクトに対して、(TECH LAB PAAKの)審査の頃から本当にそんなことできるのか? と思っていたのに、今日の発表でデモが完成されていて衝撃を受けました。この半年ぐらいで、いっきにVRも現実味を帯びてきたなと実感しています。今回の発表を見ていると、予想よりも早くVRの時代が来るなと思いました。今後もTECH LAB PAAKとしても、リクルートとしてもVRを応援していきたいと思いますので、みなさんもぜひ、今日の会で横のつながりを作ってVRを盛り上げていってください」

IMG_3967_sum2

麻生が話すように、予想以上のスピードで成長しているVR。デバイス、コンテンツも出そろい、今後一般ユーザーにどんどん広がってゆくことを期待させてくれる一日となりました。また13チームのデモを見ていると、ゲームなどの娯楽に寄ったものだけではなく、より実用的に活用する例が見られたのも非常に興味深いですよね。今感じている「不便」を、VRが軽くしてくれる日もそう遠くないかもしれません。それまでTECH LAB PAAKはVRエコシステムの一員として様々なサポートをしていきます。